【週俳9月の俳句を読む】 何を信じて俳句と関わるか 今井聖を探る 大藤聖菜
【週俳9月の俳句を読む】何を信じて俳句と関わるか今井聖を探る 大藤聖菜縁あって高校文芸部時代から俳句をはじめて、細々と続けている私である。なぜ俳句を続けているのだろうか、と考えたときに、ただそこに俳句という一表現方法があるから、というのが真っ先に浮かんだ。まあ確かにそうではあるが、我ながらなんだか格好つけた言い方である。...
View Article【週俳9月の俳句を読む】 くっきりとした秋 牧萌子
【週俳9月の俳句を読む】くっきりとした秋牧萌子秋はセピア色を帯びた気持ちになる。それは、少し淋しく悲しい、周りから取り残されたような気持ちだ。しかし、世界は、鮮やかな花やあたたかなひかりにあふれている。そこで、わたしは心のもの悲しさと裏腹に輪郭や色のくっきりとした四句について、俳句の中の色とひかりに注目して鑑賞したい。 鼻歌や長芋擦り過ぎてしまふ 冬魚...
View Article週刊俳句 第497号 2016年10月30日
第497号2016年10月30日堀下翔まるごとプロデュース学生特集号 前篇■樫本由貴 確かなあはひ 10句 ≫読む■野名紅里 そつと鳥 10句 ≫読む■福井拓也 冬が来るまでに 10句 ≫読む……………………………………………■『近現代俳句資料』より末吉麦門冬を読む ……上谷佑梨子 ≫読む■長い午後郡山淳一について……大塚凱 ≫読む■青春のかたみ遺句集『散木』を頂点とした福永耕二論……大林桂...
View Article10句作品 馬の貌 斉藤志歩
クリックすると大きくなります馬の貌 斉藤志歩朝露やおとなの馬の貌をして友とゐて友の姉来る草紅葉蜻蛉に肉の貧しき躯かな蜻蛉の怒れる顎のよく開く肉入れて波の立つなり芋煮会かりがねや展望台の窓の罅鉛筆を取り落としたるそぞろ寒新豆腐窪みに醤油溜まりけり籠を開ければこほろぎの匂ひ濃し月光の厨に砥石濡れてをり
View Article10句作品 梨は惑星 平井湊
クリックすると大きくなります梨は惑星 平井湊爽やかに号砲を撃ち直しけりコスモスや区切られてゐて駐車場星流る港と灯台のあひだ酔つてゐて惑星に似た梨を買ふ中華鍋煽ればかろし唐辛子秋の灯をザッハトルテが照り返す台風一過両耳をよく洗ふ湯上がりの人の剥きたる林檎ぬくし秋霖や物書くにリハビリが要る火恋し画集の海のみな日暮れ
View Article〔今週号の表紙〕 第498号 無題 成影力
〔今週号の表紙〕第498号 無題成影力あなたに行く先は見えているだろうか。山の上から見下ろすように、はるか遠くまで続くその道筋が、見えているだろうか。●週俳ではトップ写真を募集しています。詳細は≫こちら
View Article【週俳9月の俳句を読む】 小澤實の中の川 青本柚紀
【週俳9月の俳句を読む】小澤實の中の川青本柚紀ぼくの体の中には川が流れている。川を見るのが好きだ。川を見るのが好きだ。川を見ているとき、眼前に流れている川と、ぼくの中を流れる川とを無意識のうちに比較している。(邑書林『セレクション俳人 小澤實集』 初出は「FRONT」1999年9月号)そう、小澤實の中には川がある。彼自身の中のみならず、その俳句...
View Article【週俳9月の俳句を読む】 同じ言葉から、同じモチーフから 森優希乃
【週俳9月の俳句を読む】同じ言葉から、同じモチーフから森優希乃結社・同人誌競詠「澤vs街」。同じテーマ、同じ題名でまとめられた連作だからこそ、比べてみるとやはり二つの結社それぞれの色がよく出ていて、さらに個人でもそれぞれ異なる面白さが惜しみなく発揮されているのがはっきりと伝わってきて、私は心が踊ってばかりだった。まず五感を伝える強さや、把握の独創性と共感性のバランスの上手さなどが特に心に残った。羊刈...
View Article【週俳9月の俳句を読む】 澤街の観察日記 翁長徹
【週俳9月の俳句を読む】澤街の観察日記翁長徹二結社の競詠、大いに楽しみました。今回は、詠者の持つ題へのテーマを探りながら、一人の句群から二、三句ずつ選び、評を書きました。とはいっても、お恥ずかしながら、まだまだ双方の結社のことなど、知らずのうちに書いた文であります。ここはひとつ、詠者を観察しつつ、日記の心もちで評しようか、と思った次第でございます。評を楽しまずして、なんとやら。ということで、「朝顔の...
View Article【週俳9月の俳句を読む】 初俳句鑑賞文 大橋佳歩
【週俳9月の俳句を読む】初俳句鑑賞文大橋佳歩お願い私は高校1年生の夏、丁度俳句甲子園の全国大会が始まる1,2週間前に俳句の世界に飛び込んだ。俳句の世界に入ってから今まで俳句の鑑賞はしてきたが、それは言葉で言うのみであり、『鑑賞文』にしたことは無い。つまりこの文の下にある鑑賞文が初めての鑑賞文になる。至らない点等が多々ある可能性があるが温かい目で見てほしい。嶋田恵一(澤)浜辺に吹くトランペットや曼珠沙...
View Article鷲谷七菜子の真意 第一句集『黄炎』論 瀬名杏香
鷲谷七菜子の真意第一句集『黄炎』論瀬名杏香大正十二年、上方舞楳茂都流家元の父、宝塚スターである母との間に鷲谷七菜子は生まれた。その生い立ちが色濃く分かるのが、第一句集『黄炎』(昭和三十八年)の一頁目である。また彼女の句を語るために先人が頻繁に句を引用してきたのもこの頁だ。まずはこの頁から三句選んであげてみる。なお、本句集は第一部「十六夜」、第二部「雪」、第三部「黄炎」に分かれ、年代を区切った三部構成...
View Article松島の月 三村凌霄
松島の月三村凌霄わたくしが羈旅を厭う情は、蓋し吟行に端を発する。異郷ならずとも、少し日常を離れた土地に赴いたならば、山川を眺望して徒なる沈思に耽り、それにも倦んだならば、淫する所の古書を出だして眼前の風光を遮り、文字の林を彷徨したい。わたくしは十七字を持ち寄って品隲(ひんしつ)するの煩に堪えない。蕉翁が身を天地の一沙鷗と為した、その意は那辺に在るのか。都合の良い引用が許されるならば、答えは芭蕉本人の...
View Article久保田万太郎戯曲の展開 福井拓也
久保田万太郎戯曲の展開福井拓也初出:「春燈」(2016.9/部分転載)。転載に当たって加筆修正。2016年5月6日に実施された〈久保田万太郎研究会〉の講演録。「春燈」が年に一度開催している同研究会では、研究発表のほか役者による戯曲のリーディングが行われる。本日は「久保田万太郎戯曲の展開」と題して、少しお話をしていきたいと思います。万太郎は自らの俳句を「「心境小説」の素」(『ゆきげがは』双雅房、昭11...
View Article中村汀女・星野立子に見るヒロイン像 『中村汀女・星野立子互選句集』 坂入菜月
中村汀女・星野立子に見るヒロイン像『中村汀女・星野立子互選句集』坂入菜月戦後間もない昭和22年に発行された『中村汀女・星野立子互選句集』という句集がある。内容はごくシンプルなもので、まず立子選の汀女116句と立子による「汀女さんの句」という文章があり、後半に汀女選の立子108句と汀女による「立子さんのこと」という文章があるという構成だ。まえがきもあとがきもなく、ともすると二人の間だけで完結しているよ...
View Articleあふれでるもの 碧梧桐の長律句について 青本瑞季
あふれでるもの碧梧桐の長律句について青本瑞季赤い椿白い椿と落ちにけり 『新俳句』(明治29年)白足袋にいと薄き紺のゆかりかな (同)この道の富士になり行く芒かな 『春夏秋冬』(明治33年)虚空より戻りて黍の蜻蛉かな 『新傾向句集』(明治39年)思はずもヒヨコ生まれぬ冬薔薇 (同)木蓮が蘇鉄の側に咲くところ 『新傾向句集』(明治44年)林檎をつまみ云ひ尽くしてもくりかへさねばならぬ...
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