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週刊俳句 第453号 2015年12月28日

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第453号
2015年12月28日


2016 新年詠 大募集 ≫見る


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2015年・週俳のオススメ記事】
1月 読み書きの堆積……西原天気 ≫読む
2月 失われた身体を捜さない……青本柚紀 ≫読む
3月 アーカイブ力(りょく)……荻原裕幸 ≫読む
4月 リアル……福田若之 ≫読む
5月 ≫読む
6月 リロードしながら……田中惣一郎 ≫読む
7月 太宰治のいる風景……小池正博 ≫読む
8月 ねっとりと……黒岩徳将 ≫読む
9月 お尻ならなおさら……三木基史 ≫読む
10月 「書く」における「こと」性とそのほか……宮﨑莉々香 ≫読む
11月 ≫読む
12月 ねぼけたはなし。……小津夜景 ≫読む


人が居た場所に立ってみると。
シリーズ「八田木枯の一句」の楽しみ方……茅根知子 ≫読む

【インタビュー】
柳本々々さんに聞きました
季語のこと、定型のこと、勇気のこと ≫読む

【年末大放送】
2015年回顧
生駒大祐堀下翔
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文語を語る
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【句集を読む】
「病人にメロドラマなし」
佐々木義夫遺句集『棕梠茫々』を読む
……今野浮儚 ≫読む

俳句雑誌管見 俳句のデザイン……堀下翔 ≫読む

自由律俳句を読む 121
「鉄塊」を読む〔7〕 ……畠働猫 ≫読む

連載 八田木枯の一句
小春日のこゑはむかしの屑や屑……太田うさぎ ≫読む

〔今週号の表紙〕海岸……西原天気 ≫読む

後記+執筆者プロフィール ……西原天気 ≫読む

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週俳2015年11月のオススメ記事  燕の白 上田信治

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週俳2015年11月のオススメ記事

燕の白 上田信治


2015角川俳句賞落選展 2015年11月1日号

今年も落選展、やってます。20代作家がたくさん、予選通過作も多数、いつもどおりかそれ以上の作品の充実なのですが、鑑賞記事がまだなんです、鋭意準備中。もうすぐ、お届けできると思います。参加者の皆様、もう少しお待ち下さい。

名句に学び無し、なんだこりゃこそ学びの宝庫 (17)  今井 聖 2015年11月8日号

勤めいやな朝まつこうから燕の白 和知喜八 

まっこうからくる燕の白は鮮烈でエネルギッシュ。怠けたい「私」に対して一見叱咤しているように見えるが鳥だって飢えによってうながされている。

燕という別の生命、別の意識体の侵入によって、更新される主体。

今井さんは掲句を、「男」におしつけられた「あらまほしき倫理の逆をいく」「工場要員の、営業最前線の、泥まみれの二等兵の「本音」」であり、社会的エリート達による因襲的な俳句を更新するものだと書きます。

しかしむしろ、今井さんの視点は、「あらまほしき」社会性俳句の倫理観を歴史的にカッコに入れるに十分なもので、もうこの句は「なんだこりゃ」には見えません。

週俳2015年5月のオススメ記事 もう一回読んでください 上田信治

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週俳2015年5月のオススメ記事
もう一回読んでください

上田信治




澤田和弥さん追悼 (1)2015年5月24日号、(2)2015年5月31日号。

ぜひ、もう一回、読んで、さわDさんのこと、思い出して下さい。

はニンジャのニ『冬野虹作品集成』の一句 福田若之 2015年5月10日号

この句の意味から読み取れるのはうすさだ。しかし、質感はそれとは別の、句の棒立ちである。僕は、この句の「そして」のあたりを平手で弱くはたいてみるのだが、句はそれによってへにゃりと曲がることもなければ、まるごと倒れることもない。

『冬野虹作品集成』は、2002年に逝去した作家の、三巻からなる作品集成。上の評言がどの句にむけられたものか、も、またぜひ、リンク先の本編にてお確かめ下さい。

あなたへの手紙 佐藤文香『君に目があり見開かれ』を読む 生駒大祐 2015年5月24日号

これらの俳句において言葉と景色、あるいは言葉と感情、それらは同時に、同じ大きさでそこに存在する。それが、おそらく言葉として真に純粋だということだと思うのです。

上の評言がどの句にむけられたものか、も、またぜひリンク先の本編にて

週俳4月の俳句を読む 2015年5月10日号

もともと4月の作品が充実しているのですが、この「読む」も、めっちゃ豪勢。ぜひ、リンク先の本編にて。

【八田木枯の一句】煩悩の手毬ついてはつき外し 角谷昌子

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【八田木枯の一句】
煩悩の手毬ついてはつき外し

角谷昌子


煩悩の手毬ついてはつき外し  八田木枯

第六句集『鏡騒』(2010年)より。

寺々の除夜の鐘を聞いて新しい年を迎える。百八煩悩を取り去るために撞かれる鐘の音は、しみじみと心にしみ入る。迷いは霧散したはずだが、そうすっきりとはいかないもの。めでたく年明けて手毬をついても、うっかり手を逸れてしまう。それはふと胸奥を不安がかすめたせいなのだ。毬は現世を逃れるように、何処へか果てしなく転がり続けてゆく。

手毬をつくときは、唄に合わせてひとつふたつと数を増やしてゆく。失敗してしまうまで、数はひたすら大きくなる。ところが木枯はかつて〈とこしへに数を捨てゆく手毬うた〉『天袋』と詠んだ。「手毬うた」を口ずさみながら「数を捨て」るとしたのだ。そこには煩悩を捨てようとする願いが籠められていたのだろうか。この世のさまざまな欲を捨て去ることの難しさを知るがゆえに、叶わぬ思いをつのらせたのか。

〈捨てし数いくつかしれず手毬つく〉(『天袋』)もある。来し方を振り返ると、日々の生活のために「捨て」てしまったことも多々あった。そんな失うことの繰り返しの上に、現在の自分の位置は築かれている。はなはだしい喪失感を抱きつつ、ひとつづつ手毬を弾ませて毎日を重ねてゆく。煩悩があるため、つい「手毬ついてはつき外」すのだ。しかし欲があるゆえに生きがいもできるだろう。手毬をつきながら、木枯は煩悩を飼いならし、さらなる句境へ進まんと、己を鏡に映し出しているのだろうか。さまざまなものを捨てて、俳諧の鬼となりゆく姿には、青白い焔がゆらめいている。


自由律俳句を読む 122  「鉄塊」を読む〔8〕 畠働猫

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自由律俳句を読む 122
 「鉄塊」を読む8

畠 働猫


あけましておめでとうございます。
皆様にとってよき一年となりますよう心よりお祈り申し上げます。
本年もどうぞよろしくお願いします。

元日や餅、二日餅、三日餅 尾崎放哉
小学生の頃は、毎年のように年賀状に「おもちを食べすぎないでね」と書き、書かれたものだが、最近とんと「もち」を食べなくなった。
かつて自分は餅が好きで、正月三が日と言わず、あるだけとにかく食べていたように思う。そうした餅欲が今やまったく失われてしまった。
毎年正月用に切り餅を買うものの、袋すら開けずに正月を終えることが続いている。
その自分の変化の理由を考えてみると、やはり家族の問題が影響しているのだろうと思う。
今考えると、餅は団欒の象徴であったのだ。
団欒の中でこそ、餅はいくらでも食べられたのである。
「おもちを食べすぎないでね」という言葉が、ある意味で言祝ぎであるように、餅とは幸福の象徴であった。

放哉の句においては、餅は正月にもらったものであろう。
これまでの自分は、ほかに選択の余地がない様子が詠まれているのだと思い、餅に飽いた気持ちを単純に読み取っていた。
しかし餅を幸福の象徴として考えたとき、その読みはより複雑な屈折したものに変化した。

このように「読み」もまた日々更新されるものである。
同様に「読み」を更新される出来事が、この元日にあった。

今年の正月は、年明けの入院に向けてと例年の年越しの準備とが重なり、慌ただしいものになった。
それにも関わらず、普段仕事でいない自分が家にいるためか、猫たちは妖怪すねこすりとなり、始終足元にすり寄って歩行の邪魔をしてくる。
ともあれ元日を迎え、介護中の母にそばなど食べさせ、やっと一息ついたところでふと見れば、太った黒猫があおむけでストーブの前に寝ている。
そのなんともだらしのない姿に思わず力が抜け、頭に一茶の句が浮かんだ。

めでたさもちゅうくらいなりおらが春 小林一茶


猫も猫なりに安心しているのだろう。
まさに「おらが春」と言っているかのようであった。
以前から好きな句ではあったが、このとき実感として理解できたように思う。
「読み」すなわちコンテクストは経験や体験によって日々更新されていくものだ。今年も様々な経験をしながら、新しい読みやより本質へ近づく読みを目指していきたいものである。



さて、「鉄塊」においても2013年から2015年まで3度、新年詠が企画され、当時の参加者の句が寄せられた。
今回はそれらの句を紹介したい。



◎鉄塊新年詠(2013)より

うすまった酒のんで居る初日出るころ 天坂寝覚
二日から人が減る神社三日まで待て 渋谷知宏
ひょっこり仮面は誰でしょう 中筋祖啓
年が明けていた窓の無精髭 畠働猫
起きればみんな初詣 馬場古戸暢
新年の闇へ放ってみる雪玉 藤井雪兎
喉詰まらせて逝った話。あと今年もよろしく 本間鴨芹
正月休みなんてない猫が五時から鳴いてる 松田畦道


◎鉄塊新年詠(2014)より

皆の正月から逃れてカフェで目薬 小笠原玉虫
燃やすものがない火を見ている猿だ 地野獄美
伊勢海老、分かったからもう怒るな 十月水名
餅つきで筋肉痛になりました 中筋祖啓
正月の猫ずっと食卓にありをりはべり 畠働猫
抱き上げる子の両手に熨斗袋 馬場古戸暢
初日と共に影のあらわれ 藤井雪兎
年に一度の静けさである元旦の朝 風呂山洋三


◎鉄塊新年詠(2015)より

薄氷踏んでゆくちちははの生きる街 小笠原玉虫
川沿いのここはどこだろう除夜の鐘 武里圭一
まだおだやかな空初日出る 畠働猫
甥も姪も俺もお熱だ 馬場古戸暢



*     *     *



自由律俳句においては季語を用いるかどうかも自由である。
ここで挙げた句群は、新年詠という性格上、新年の季語を用いた句が多い。
自由律俳句と季語との関係については、いずれまた時間を割いて考察したいと考えている。
以前、句友の小澤温(おざわ はる)が、「短律の自由律俳句は、それ自体が季語になろうとしている」というようなことを語っていて、ひどく納得したことがある。
確かに「せきをしてもひとり」「陽へ病む」などはそのまま季語となっておかしくないものである。
季語とは、背後に膨大な物語を抱えた言葉である。それを用いることで俳句は無限の物語性を獲得している。
自由律俳句における短律句とは、その物語性を生む言葉(季語に変わるもの)を生み出す試みである。
これは自分にはすんなり納得のいく考え方であり、「読み」であった。


一りん咲けばまた一りんのお正月 種田山頭火
今この瞬間も、多くの句が詠まれ、読まれているのだろう。
美しい句に出会うことはもちろん、自分を揺さぶるような「読み」に出会うことも無上の喜びである。
自由律俳句においても、新しい句が一輪また一輪と咲き、また優れた「読み」が一輪また一輪と咲き誇ることを願って、この正月の筆を置く。



次回は、「鉄塊」を読む〔9〕。


週刊俳句 第454号 2016年1月3日

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第454号
2016年1月3日



特集2016「週俳」新年詠


1月1日
ロードムービー始まる鷹の目玉より 今井 聖
数の子の無くなりし皿汁残る   島田牙城
ばついちの門をくぐって初景色  紀本直美
鍋光る福島第一原子力発電所事故以降 曾根 毅
山神の削り花とは女陰の毛    谷口智行
元日の愚かに過ぎぬ茜雲     岸本尚毅
足音に猫目を覚ます飾り海老   後閑達雄
賀状書くiichikoフラスコボトルかな瀬戸正洋 
元朝やきのふとちがふけふのふふ 矢作十志夫
おおとりやうみやまに身をよこたえて 宇井十間
寿老人の頭を帆柱や宝船     清水良郎
新聞を隈なく読めりお元日    熊谷 尚
目のレンズの曇り拭はむ初明り  大島雄作
初刷や兜太の笑みの「朝日賞」  髙橋透水
にきび食ふこそこそも好き歌留多せむ(←)薮内小鈴
お賽銭一家にまっさらな五線紙  宮崎斗士
藪入や件に腕ひしぎ十字     赤野四羽
初日の出ドミノ倒しのきらきらす 中原和矢
亡き馬と夜ごと語りて春永し   森脇由美子
二日酔ひ自分捨つれば年明くる  富田踏修
響き合ふ港の汽笛去年今年    淡海うたひ
元日の太陽沈むアスフアルト   矢口 晃
戦争せぬための戦争冬すみれ   鳴戸奈菜
もっと光を元旦の窓開け放つ   畠 働猫
初詣畦のみどりのうるみをり   山口昭男
餅花や昭和のカフェに葡萄の扉(ひ) 松平青萄
去年今年鯨尺もて背ナを掻き   上野一孝
大なり小なり我らに未来あり淑気 池田澄子
一刀で首刎ねられて初寝覚    滝川直広
みんなさみしい明けましておめでたう 宮本佳世乃
ゆるゆると初夢をでて夢に入る  月野ぽぽな
恐る恐る伊勢海老掴むめでたさよ 広渡敬雄
フェノロサとながめてゐたり初日の出 山田露結
かはらぬといふ去年今年この平和 藤田翔青
鷺白く鴉の黒くお元日      岩淵喜代子
そのちょろぎ生きていてまだ動くから 石原ユキオ
太初には大陸ひとつ初御空    仲 寒蟬
惑星に象が一頭お元日      小川楓子
淑気かなのぞみまっすぐ太陽へ  わたなべじゅんこ
買初の書店古書店又書店     杉田菜穂
海黯くなみおと昏く去年今年   しなだしん
喜びの米といふありこぼしけり  山西雅子
姿見に反射してをる初明り    杉原祐之
正面に城見えてをり初句会    涼野海音
よく育つ猿の腰掛去年今年    常盤 優
初がらす双子同時に振りかへる  柏柳明子
元日の一日聖歌の途切れざる   橋本 直
買初めのペットボトルのペコと鳴る 村嶋正浩
初富士に死化粧する巨きな手   堀田季何
去年今年クロノスがスクロールする 鈴木茂雄
元日の日の出を猿も見て御座る  徳田ひろ子
梅椿左右に従へ初日まつ     ハードエッジ
裸木となれり拳を溜めるため   玉田憲子
木呪ひ終へて仏身浮かぶ空    中村 遥
霜解けの暗峠ひとは肉      牟礼 鯨
年明けのまだ明けぬ道月明かり  後東 靜
初詣後千年の迷ひ道       竹内宗一郎
姫始め一花奈二美羽三菜美子   ゆなな子
もっと光を元旦の窓開け放つ   畠 働猫
初明り赤子のデコに御目出度う  富永顕二
待つほどに処処のきらめく初日哉 櫛木千尋
去年今年何ぞと猫は問はねども  照屋眞理子
伊勢海老のあかあか父と正対す  齋藤朝比古
初みくじ甘酒置いて引きにけり  鈴木不意
黒猫も悪事を休むお正月     青島玄武
咆哮す毘沙門天の合図かな    けんいちろー
弾初を幼き日より弾きし曲   トオイダイスケ
読初は手の記憶あるページより  鈴木牛後
生誕の海から遠き恵方かな    灌木
危惧された牡蠣はゆっくり夢精する 月波与生
初凪や信なきわれに天主堂    三宅勇介
髪型を父に近づけ初写真     三島ちとせ
子の描く月面都市や年賀状    鈴木桃子
お雑煮へ二滴三滴の眼薬     北大路京介
初日さす関東平野いきいきと   茅根知子
行先はこれから決める福寿草   小林かんな


1月2日
絵双六たたまれ山河残りけり   川越歌澄
あけましておめでたういふたび歯石 中山奈々
頭かきつつ申年の礼者来る    篠崎央子
片方の目より覚めたる二日かな  五島高資
夢の世やむすめふさほせ取り損ね 小林苑を
御降や四十八歳と並び      岡村知昭
棒の影棒にもならず去年今年   嵯峨根鈴子
四日には着くかと思ふ年賀状   西村麒麟
正直に信号を待つお元日     河野けいこ
点描の寿ぐ明けや福寿草     琳譜
浚渫船雪のプラットホームまで  斎藤悦子
揺れやみて夕買初のインク壺   赤羽根めぐみ
石ノ床木ノ床畳ノ床正月     佐藤のど
見飽きたる指の長さよ初寝覚   糸屋和恵
「お正月ですから」とばかり言うてをり 松尾清隆
読初のベンチ買初待ちゐたる   黒岩徳将
幸せになる覚悟あり大旦     山本たくや
万両のこんもりとしてお正月   四ッ谷龍
獣めく初日人類立ち上がる    小久保佳世子
黒糖を舐めて眠つて年明くる   倉田有希
来た来たと囃され初日出でにけり 南十二国
をさな子のしと浴びにけりお元日 押野 裕
猿まはし終へてぱちんと腕時計  西山ゆりこ
元日の酸素の味の美味しかな   鷲巣正徳
賀状来る地に樹に草に水流れ   松野苑子
少年の揚がらぬ凧の揚がりたる  吉川わる
鳥居越し二日の海を眺めけり   松本てふこ
宿題をロボットにさせ寝正月   渕上信子
初空に鴨くちばしを上げにけり  対中いずみ
澄み渡るこころ初空富士の山   中嶋浩智
大服やうつらうつらと鏡の中   大塚 凱
初春をほほけしひとに告ぐるかな 中川東子
一病を負ふまなざしに年の酒   下坂速穂
会へばまづ手を振り合つて御慶かな 依光正樹
元気でもさうでなくてもお元日  依光陽子
初刷のマチスの鼻の童かな    佐藤明彦
夫うつくし雪を一粒ずつ食うぶ  佐々木貴子
空に散り初鴉とは遠きもの    生駒大祐
軒下に積みて瓦や初明り     林 雅樹
何の芽か早や元日の土を割る   村上鞆彦
めりめりと空のめくれてくる飾  鴇田智哉
太陽が妙にギラギラ御元日    北川美美
年男飲んで笑つて泣いてゐる   関根かな
誰にでも引ける大吉初詣     北大路翼
父母猿似われ猿顔や年迎ふ    小澤 實
初風やこの川はすぐ海のもの   今泉礼奈
冥冥の命命鳥の初日影      九堂夜想
細胞の核揺るるまで除夜の鐘   藤井南帆
雨粒に芽のふくらめる今朝の春  大西 朋
初夢のどこにも夫あらはれず   江渡華子
水落ちて石の褶曲去年今年    田中亜美
福笑ひ飽かずに笑ふ子を囃し   本多 燐
抽斗に違ふ初日を入れてもよいか 渡戸 舫
去年今年君は普通に良い名前   外山一機
ふくらみし小鼻をつまむ初鏡   清水右子
去年今年煙を残し消ゆるもの   津久井健之
鏡餅割れねつとりと舌がある   兼城 雄
あかるい頓馬のふかい慶び飾海老 田島健一
その道の魚の匂ひの三ケ日    田中惣一郎
ラグビーの胸ラグビーの腿の下  阪西敦子
書初展のだんだんキラキラネーム展 関根誠子
門松に手足生やして歩かせて   久留島元
死にかけたくせに還暦初日の出  小池康生
はつはるやマーマレードの黄金色 金子 敦
プリンセスの名を持つ子猿お正月 三浦 郁
ソファ凹部戻るに音や去年今年  村越 敦
よく晴れて中洲に雉がいて二日  小林鮎美
正月の炬燵の上の遊びかな    遠藤千鶴羽
初春の地球や茶トラ猫渡る    篠塚雅世
民手づから平和葬る年の明く   関 悦史
マウンドの高みに立てて注連飾  小川春休
元日や知育玩具の黄が滑る    佐藤文香
みどり児の名の年酒を酌めるかな 前北かおる
餅抜きの雑煮に浮かぶ毬麩かな  猫髭
海光に消ゆるふるさと薺粥      津川絵理子
汚し汚し石で打つ布年迎ふ    藤 幹子
流木に海の匂へる初日かな    宇志やまと
食積や駅伝テレビついたまま   本井 英
初泳ぎ猫の重さを振り切つて   菊田一平
引く波に耳をすまして喪正月   満田春日
福沸厨の音もかむさびて     岩上明美
魚ん棚に魚のかがやく淑気かな  森賀まり
初鴉波打際を眩しがる      高勢祥子
大旦卒寿は太き糞(もの)まりぬ   飯田冬眞
年玉の袋に描くR2-D2     岡野泰輔
アトリエの天窓に星淑気満つ   大井さち子
新暦一枚物やドアに貼る     沼田美山
破魔矢かつぎて空広きところまで 塩見明子
初日さっと白湯マグカップにどっと 金原まさ子
元旦の麻雀卓にアポロチョコ   藤田 俊
幼子の見つけたる星お元日    千葉皓史
叫ぶでも逃げるでもなくかまくらに 小津夜景
はつはるの母をまるごと泡立てる 藤本る衣
唇を消し言葉がこもる福笑い   野口 裕
衣擦れに顧みすれば福寿草    加藤御影
お屠蘇こぼされて鰤の赤い    馬場古戸暢
古着屋のスカートのなか淑気立つ 上野葉月
肛門も開いてしまい去年今年   芳野ヒロユキ
バターナイフきらり元日遠くなる  森山いほこ
淑気かな類神猿の群にゐて    石原 明
初夢の後ろで待っている兵士   内藤独楽
スヌーズを片手に止めて二度寝が良い 佐藤未都
三日はや日本鳥類大図鑑     今野浮儚
門松の間に座るブルドッグ    岡田由季
門松の番人めくやシティーホテル 鈴木陽子
練習が嫌なら福笑どうぞ     仮屋賢一
ポケットに突っ込む買初の熨斗烏賊 
近 恵
埋もれ毛のひよろひよろ伸びる二日かな 西川火尖
罰としてそのまま鏡餅でゐよ   西原天気
四散する口内のグミ年新た    豊永裕美
たづくりを食べてそれから書き起こす 福田若之
首元の影くつきりと初写し    中西亮太
玄関に靴あふれゐるお正月    西村小市
身の上を根ほり葉ほりと訊く初湯 島 涼風
うろくづのうすももいろの淑気かな 安里琉太
初夢の潮盈珠のかろきこと    中町とおと
またつなぐため放す手や春の雨  山田耕司
読初は誰も死なない本を採る   岡本飛び地
交番のぽつりと灯り去年今年   村田 篠
一月の夜空や空をゆきわたり   宮﨑莉々香
黒腕に餅の重なる日月よ     上田信治



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後記+プロフィール 第454号

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後記 ● 上田信治

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no.454/2016-1-3 profile

■今井聖 いまい・せい
「街」主宰。俳人、脚本家。

■島田牙城 しまだ・がじょう
1957年生まれ。里代表。邑書林代表。兵庫武庫之荘在住。

■紀本直美 きもと・なおみ 
1977年生れ、船団」会員。 句集『さくさくさくらミルフィーユ』(創風社出版)。

■曾根 毅 そね・つよし
1974年生まれ。「LOTUS」同人。現代俳句協会会員。第四回芝不器男俳句新人賞。句集『花修』(2015年、深夜叢書社)

■谷口智行 たにぐち・ともゆき
昭和33年生まれ。「運河」編集長。 俳人協会会員。日本文藝家協会会員。

■岸本尚毅 きしもと・なおき
1961年生「天為」「屋根」同人

■後閑達雄 ごかん・たつお
椋所属 俳人協会会員 句集に卵がある

■瀬戸正洋 せと・せいよう 1954年生まれ。れもん二十歳代俳句研究会に途中参加。春燈「第三次桃青会」結成に参加。月刊俳句同人誌「里」創刊に参加。2014年『俳句と雑文 B』を上梓。

■矢作十志夫 やはぎ・としお
1948年生まれ。「街」同人を経て、現在は「あだち野」同人、編集長。

■宇井十間 うい・とげん
1969年、青森県生まれ・東京都出身。アメリカ在住。医師、研究員。「吟遊」同人。第26回(2006年度)現代俳句評論賞受賞。句集『千年紀』

■清水良郎 しみず・よしろう
無所属、第59回角川俳句賞

■熊谷 尚 くまがい・たかし
1968年秋田市生まれ。秋田大学教育文化学部附属小学校・主幹教諭。「狩」同人。俳人協会会員。

■大島雄作 おおしま・ゆうさく
能村登四郎に師事。「沖」を経て2007年より「青垣」代表

■高橋透水 たかはし・とうすい
1947年新潟生。東京都中野区在住。定年を機に本格的に俳句を学ぶ。趣味は絵画鑑賞。
現代俳句協会会員。

■薮内小鈴 やぶうち・こすず
1968年生まれ。無所属。

■宮崎斗士 みやざき・とし
1962年東京都生まれ。「海程」所属。「青山俳句工場05」編集・発行人。第45回海程賞、第27回現代俳句新人賞受賞。句集『翌朝回路』『そんな青』(ともに六花書林刊)。現代俳句協会会員。 青山俳句工場05ブログ http://blog.goo.ne.jp/aohai05

■赤野四羽 あかの・よつば
無所属。「世界を俳に」句集Styleにて販売中。

■中原和矢 なかはら・かずや
1983年山口県生。「雉」「晨」所属。

■森脇由美子 もりわき・ゆみこ
2010年「街」入会2012年「街」同人。2015年「街」退会
2015年「汀」入会。俳人協会会員。

■富田踏修
昭和44年東京生れ。東京在住。平成27年10月より屍派

■淡海うたひ おうみ・うたい
1955年生まれ。写真集『寺ねこ』俳句担当。句集『危険水位』。
俳人協会会員。

■矢口晃 やぐち・こう
1999年「鷹」入会。2011年「鷹」退会、「銀化」入会。

■鳴戸奈菜 なると・なな 1943年京城生。「琴座」「らんの会」「豈」を経て、季刊同人誌「らん」創刊。句集『イヴ』『天然』『月の花』『微笑』など。評論集に『言葉に恋して―現代俳句を読む行為』など。

■畠 働猫 はた・どうみょう 1975年生まれ。北海道札幌市在住。自由律俳句集団「鉄塊」を中心とした活動を経て、現在「自由律句のひろば」在籍。

■山口昭男 やまぐち・あきお
昭和30年(1955年)4月22日・兵庫県生まれ 
波多野爽波、田中裕明に師事 「秋草」創刊主宰 
句集『書信』『讀本』

■松平青萄 まつだいら・せいとう
1952年、北海道生まれ、日光在住。
2009年3月よりブログ上で俳句を詠みはじめる。

■上野一孝 うえの・いっこう
1958年兵庫県生まれ。1975年より森澄雄に師事。「杉」編集長・「杉」同人を経て、2011年、高橋博夫とともに「梓」創刊し、現在「梓」代表。句集『李白』、評論集『森澄雄俳句熟考』『肉声のありかを求めて』など。

■池田澄子 いけだ・すみこ
「豈」「船団」所属 

■滝川直広 たきがわ・なおひろ
1967年生。「藍生」所属

■宮本佳世乃 みやもと・かよの
1974年東京生れ。2015年、「オルガン」を始動。「炎環」、「豆の木」。
句集『鳥飛ぶ仕組み』

■月野ぽぽな つきの・ぽぽな
1965年長野県生まれ。ニューヨーク市在住。「海程」同人。現代俳句協会会員。2008年海程新人賞、2010年現代俳句新人賞、2014年海程賞受賞。月野ぽぽなフェイスブック:http://www.facebook.com/PoponaTsukino

■広渡敬雄 ひろわたり・たかお
1951年福岡県生まれ、「沖」同人、「青垣」会員、「塔の会」会員、
俳人協会会員。句集『遠賀川』『ライカ』(ふらんす堂)。2012年
角川俳句賞受賞。

■山田露結 やまだ・ろけつ
昭和42年生。愛知矢作川デルタ在住。『銀化』同人。句集『ホームスウィートホーム』。

■藤田翔青 ふじた・しょうせい
1978年神戸生。高校3年より作句し1999年より黒田杏子に師事。「藍生」会員。俳人協会会員。

■岩淵喜代子
季刊俳誌「ににん」代表

■石原ユキオ
憑依系俳人。1月中に重大発表を予定。twitter:@yukioi

■仲 寒蝉 なか・かんせん 1957年、大阪市生まれ。「港」「里」同人。第50回(2005年)角川俳句賞受賞。句集『海市郵便』(邑書林2004年)、文集『鯨の尾』(邑書林 2007年)。佐久市在住。

■小川楓子 おがわ・ふうこ
「海程」「舞」所属。共著に『超新撰21』『俳コレ』。

■わたなべじゅんこ
1966年生まれ。「船団」「大阪俳句史研究会」所属。甲南大学・佛教大学非常勤講師。神戸新聞読者文芸俳句欄選者。句集『鳥になる』『seventh_heaven@』『junk_words@』。

■杉田菜穂 すぎた・なほ
1980年生まれ。「運河」同人、「晨」同人。俳人協会会員。
句集に、『夏帽子』(角川学芸出版、2010年)、『砂の輝き』(KADOKAWA、2014年)がある。

■しなだしん
「青山」同人。

■山西雅子 やまにし・まさこ
「舞」「星の木」所属。

■杉原祐之 すぎはら・ゆうし
昭和五十四年生まれ。「山茶花」「夏潮」所属。句集『先つぽへ』。

■涼野海音 すずの・うみね
1981年生まれ。香川県高松市在住。「火星」・「晨」同人、「草藏」会員。俳人協会会員。句集『一番線』(文学の森)。

■常盤 優 ときわ・ゆう
2005年「炎環」入会。石寒太に師事。
2008年「炎環」同人。

■柏柳明子 かしわやなぎ・あきこ
1972年生まれ。「炎環」同人、「豆の木」参加。第30回現代俳句新人賞、第18回炎環賞。句集『揮発』。

■橋本 直 はしもと・すなお
1967年生。「豈」同人、「鬼」会員。「俳句の創作と研究のホームページ」

■村嶋正浩 むらしま・まさひろ
1941年生まれ。「澤」「翡翠」同人。俳句時々詩。詩の個人紙「言葉の海へ」発行中。
詩集に「晴れたらいいね」(ふらんす堂 2011年)

■堀田季何 ほった・きか
東京生。「澤」「中部短歌」「吟遊」所属。

■鈴木茂雄 すずき・しげお
1950年大阪市生、堺市在住。「きっこのハイヒール」「KoteKote-句-Love」所属。HP「WEB 575 Internet Haiku Magazine」 http://homepage1.nifty.com/ssweb575/ Twitter「ハイク・カプセル」http://twitter.com/haiku_capsule

■徳田ひろ子 とくだ・ひろこ
所属吟社、岩手県紫波川柳社、青森県おかじょうき川柳社、現代川柳 点鐘、川柳宮城野社、ネット句会はじめの一歩

■ハードエッジ
Twitter専業俳人です。開発素句報倉庫(2015-60以降)。http://hard--edge.tumblr.com

■薮内小鈴 やぶうち・こすず
1968年生まれ。無所属。

■玉田憲子 たまだ・のりこ
1948年秋田県湯沢市生まれ。「街」同人「はるもにあ」会員。俳人協会会員。句集『chalaza(カラザ)』

■中村 遥 なかむら・はるか
1954年兵庫県生まれ、神戸市在住。2000年「斧」入会、斧同人、斧新人賞、斧結社賞受賞。第8回朝日俳句新人賞準賞受賞。句集に『海岳』

■牟礼 鯨 むれ・くぢら
昭和59年生。熱海出身。平成26年、プレバト!!を観て作句開始。同年、『花鳥』入会。祖師谷在住。

■後東 靜 ごとう・しずか
1970年生まれ。屍派の句会にときおり参加。ほか1コマ漫画も1日1枚のペースで描いています。Twitter @shizuka510 https://twitter.com/shizuka510?s=09

■竹内宗一郎 たけうち・そういちろう
1959年鳥取県生まれ。「天為」同人。「街」同人・編集長。

■ゆなな子
1987年小樽市生まれ。九州在住。「屍派」所属。酒好き、猫好き、ひよこ好き。

■畠 働猫 はた・どうみょう
1975年生まれ。北海道札幌市在住。自由律俳句集団「鉄塊」を中心とした活動を経て、現在「自由律句のひろば」在籍。

■富永顕二 とみなが・けんじ
1977年生。名古屋市在住。新宿歌舞伎町俳句一家屍派所属。

■櫛木千尋 くしき・ちひろ
1983年生。東京都在住。同人誌「俳句と超短編」編集。

■照屋眞理子 てるや・まりこ
1951年東京生まれ。歌誌『玲瓏』所属。俳誌『季刊芙蓉』代表。

■齋藤朝比古 さいとう・あさひこ
1965年東京生れ。1993年より石寒太に師事。「炎環」同人。「豆の木」副代表。第21回(2006年度)俳句研究賞。句集『累日』(2013)。

■鈴木不意 すずき・ふい
1952年新潟県生まれ。東京在住。 「なんぢや」「蒐」。

■青島玄武 あおしま・はるたつ
熊本県熊本県在住。『握手』の磯貝碧蹄館に師事。師の没後は無所属。『新撰21』に選ばれなかったほうの『新撰21』世代。現代俳句協会会員。

■けんいちろー
昭和54年生神奈川県相模湖町に育つ。

■トオイダイスケ とおい・だいすけ
1982年栃木県佐野市生まれ。東京都在住。2013年より「澤」に投句。2015年より「傍点」同人。 URL: http://daisuketoi.com/ twitter: @daisuketoi

■鈴木牛後 すずき・ぎゅうご
1961年、北海道生まれ、北海道在住。「藍生」「いつき組」「俳句集団【itak】(幹事)

■灌木 かんぼく
1948年生れ、大阪市在住。「きっこのハイヒール」(ひよこ組)所属。

■月波与生 つきなみ・よじょう

■三宅勇介 みやけ・ゆうすけ

■三島ちとせ みしま・ちとせ
昭和六十三年一月生まれ。高校二年生春より作句開始。第八回俳句甲子園出場。北海道在住。

■鈴木桃子 すずき・ももこ
1983年生まれ。静岡県出身、栃木県在住。2013年「澤」入会。

■北大路京介 きたおおじ・きょうすけ
俳句集団「いつき組」所属。自由律な会「ア・ぽろん」会員。京都市在住。

■茅根知子 ちのね・ともこ
1957年東京生れ。1999年「魚座」入会。「魚座」終刊にともない2007年より「雲」同人。2009年「雲」退会。第4回(2001年)「魚座」新人賞。第15回(2001年)俳壇賞。句集『眠るまで』(本阿弥書店)。「絵空」同人。俳人協会会員。

■小林かんな こばやし・かんな
1965年生まれ。現代俳句協会会員。

■川越歌澄 かわごえ・かすみ
北海道函館市出身。17歳で句作を始める。現在「人」同人。
句集『雲の峰』。

■中山奈々 なかやま・なな
1986年生。「百鳥」「里」同人。

■篠崎央子
1975年1月茨城県生まれ。2002年未来図入会。
2005年朝日俳句新人賞奨励賞受章。共著『超新撰21』(2010年)

■五島高資 ごとう・たかとし
「俳句スクエア」代表、「海程」「豈」同人。

■小林苑を こばやし・そのお
1949年東京生まれ。「里」「月天」「百句会」「塵風」所属。句集「点る」(2010年)。

■岡村知昭 おかむら・ともあき
1973年滋賀県近江八幡市生まれ。「豈」「狼」「蛮」所属。現代俳句協会会員。

■嵯峨根鈴子 さがね・すずこ
「らん」同人。

■西村 麒麟 にしむら・きりん
1983年生れ、「古志」所属。 句集『鶉』(2013・私家版)。第4回芝不器男俳句新人賞大石悦子奨励賞、第5回田中裕明賞(ともに2014)を受賞。

■河野けいこ かわの・けいこ
1955年愛媛県生れ 「街」同人「船団の会」会員

■琳譜
無所属。

■斎藤悦子 さいとう・えつこ
1950年広島県生まれ。「街」同人。

■赤羽根 めぐみ あかばね・めぐみ
1972年、栃木市生まれ。2008年より、秋尾敏に師事。「軸」同人、「南風」会員。

■佐藤のど さとう・のど
1995年生まれ 青山学院大学在学中

■糸屋和恵 
1968年埼玉県生まれ。95年「藍生」入会。2013年第1回星野立子新人賞受賞。15年藍生賞受賞。

■松尾清隆 まつお・きよたか 1977年神奈川県生まれ。

■黒岩徳将 くろいわ・とくまさ
1990年神戸市生まれ。現代俳句協会青年部「いつき組」所属。第五・六回石田波郷新人賞奨励賞。

■山本たくや やまもと たくや
1988年京都府出身。Γ船団の会」・Γ関西俳句会 ふらここ」会員。Γ大衆文藝 ムジカ」に創刊号より参加。

■四ッ谷 龍 よつや・りゅう
 1958年北海道生まれ。「むしめがね」発行人。

■小久保佳世子 こくぼ・かよこ
1945年生まれ。「街」同人。句集『アングル』。

■倉田有希 くらた・ゆうき
1963年東京生まれ。「里」所属、「写真とコトノハ展」代表。
HP「風と光の散歩道、有希編」 http://yuhki575.com/

■南十二国
昭和五十五年十二月、新潟に生れる。平成18年二月、鷹に入会。小川軽舟に師事。現在、鷹同人。

■押野 裕
昭和四十二年小田原市生まれ。「澤」同人。句集『雲の座』(第三十五回俳人協会新人賞)。共著『くらしのこよみ』。俳人協会会員。

■西山ゆりこ
所属結社「駒草」。昭和52年生。

■鷲巣正徳 わしのす まさのり
1952年 埼玉県生まれ。2011年7月より俳句を始める。現在「街」「豆の木」所属。

■松野苑子 まつの・そのこ
27歳より作句。現在「街」同人会会長、俳人協会会員。第8回俳句朝日賞準賞受賞。『誕生花』『真水(さみづ)』
「苑子の俳句パレット」http://members2.jcom.home.ne.jp/sono.matsuno/

■吉川わる きっかわ・わる
1965年生まれ。「都市」同人。

■松本てふこ まつもと・てふこ
1981年生まれ。『童子』同人。

■渕上信子 ふちがみ のぶこ
2007年より超結社「鬼」会員。

■対中いずみ たいなか・いずみ
1956年1月1日生まれ。「静かな場所」代表・「椋」同人。句集に 『冬菫』『巣箱』。

■中嶋浩智 なかしま・ひろとも
昭和60年生。岐阜県出身。東京都在住。

■大塚凱 おおつか・がい
1995年千葉県生まれ、都内在住。「群青」同人。

■中川東子 なかがわ・とうこ
1965年生まれ。東京都在住。「杜人」「川柳カード」会員。

■下坂速穂 しもさか・すみほ
1963年生れ。「クンツアイト」「屋根」。
2003年俳壇賞。2013年俳人協会新人賞。句集「眼光」。

■依光正樹 よりみつ。・まさき
「クンツァイト」主宰。「屋根」所属。

■依光陽子 よりみつ・ようこ
「クンツァイト」「クプラス」「屋根」所属。'98年角川俳句賞受賞。

■佐藤明彦 さとう・あきひこ
1952年北海道生まれ。「童子」編集長

■佐々木貴子 ささき・たかこ
1979年生、青森市在住。2013年句集ユリウス刊行。現在、青森県紙折り込みのこども新聞にて、俳句コラムを連載中。

■生駒大祐 いこま・だいすけ
「天為」。「手紙」「クプラス」「オルガン」。「週刊俳句」。ustream番組「Haiku Drive」。第3回攝津幸彦賞受賞。

■林雅樹 はやし・まさき
1960年生。「澤」同人。共著『俳コレ』(邑書林2011)。

■村上鞆彦 むらかみ・ともひこ
昭和54年、大分県宇佐市出身。「南風」主宰、編集長。句集『遅日の岸』。

■鴇田智哉 ときた・ともや
1969年木更津生まれ。第16回(2001年)俳句研究賞受賞、第29回(2005年)俳人協会新人賞受 賞。句集に『こゑふたつ』『凧と円柱』。

■北川美美 きたがわ・びび
1963年生。「豈」「面」。「BLOG俳句新空間」http://sengohaiku.blogspot.jp/運営。
俳誌「俳句新空間」運営

■関根かな せきね・かな
「小熊座」「豈」同人。

■北大路翼 きたおおじ・つばさ
砂の城城主。「屍派」総帥。昨年『天使の涎』を上梓。

■小澤實 おざわ・みのる
昭和三十一年生まれ。「澤」主宰。

■今泉礼奈 いまいずみ・れな
お茶の水女子大学4年。「南風」会員。

■九堂夜想 くどう・やそう
1970年生まれ。「LOTUS」「海程」同人。

■藤井南帆 ふじい・なお
「未来図」同人。「秋麗」会員。俳人協会会員。

■大西 朋 おおにし・とも
「鷹」「晨」同人。

■江渡華子 ;えと・はなこ
鷹会員。句集に『笑ふ』(ふらんす堂)、『光陰』(赤々舎)、webマガジン スピカhttp://spica819.main.jp

■田中亜美 たなか・あみ
1970年東京都生まれ。海程同人。
2006年現代俳句新人賞。2012年海程賞。

■本多 燐 ほんだ・りん
1968年6月15日生れ。「都市」同人。

■渡戸 舫 わたと・もやい
1月に3、4回句会に出る。
1年に1句世の中に句を発表する(それがこの新年詠である)。

■外山一樹 とやま・かずき
1983年10月生まれ。2000年から2年間、上毛新聞の「上毛ジュニア俳壇」(鈴木伸一、林桂共選)に投句。2004年から同人誌『鬣TATEGAMI』(発行人林桂、編集人水野真由美)に所属。ブログ(Haiku New Generation)

■清水右子 しみず・ゆうこ
「鷹」同人。

■津久井健之 つくい・たけゆき
1978年生れ。早稲田大学俳句研究会OB。「貂」同人。

■兼城 雄 かねしろ たける
東京都在住。「鷹」所属。

■田島健一 たじま・けんいち
1973年東京生れ。「炎環」同人。「豆の木」「オルガン」に参加。
ブログ「たじま屋のブログ」 http://moon.ap.teacup.com/tajima/
WEBSITE「HAIKU BILLY」 http://kuchibue.org/

■田中惣一郎 たなか・そういちろう
1991年岐阜県生れ。「里」所属。

■阪西敦子 さかにし あつこ
1977年、逗子生まれ。「ホトトギス」同人、「円虹」「ku+」。

■関根誠子 せきね・せいこ
「炎環」「や」「つうの会」

■久留島元 くるしま はじめ
1985年生。船団の会、現代俳句協会。共著『関西俳句なう』(本阿弥書店)
ブログ曾呂利亭雑記http://sorori-tei-zakki.blogspot.jp/

■小池康生 こいけ・やすお
銀化同人。句集『旧の渚』。

■金子 敦 かねこ・あつし
1959年神奈川県生まれ。句集『猫』『砂糖壺』『冬夕焼』『乗船券』。1997年第11回俳壇賞受賞。「出航」会員。俳人協会会員。NPO法人未来塾俳句教室講師。

■三浦 郁 みうら・いく
神戸生まれ、横浜在住。「春月」同人。

■村越 敦 むらこし・あつし
1990(平成2)年、東京都国立市生まれ。「澤」会員。

■小林鮎美 こばやし・あゆみ
1986年群馬県生まれ。「群青」同人。

■遠藤千鶴羽
「なんぢや」所属

■篠塚雅世 しのづか・まさよ
昭和41年 岐阜県生まれ。昭和元年 お茶の水大学国語国文学科卒業。平成21年 「未来図」入会、鍵和田秞子に師事。平成24年 「未来図」新人賞。平成27年 句集『猫の町』上梓。現在 「未来図」編集同人、俳人協会会員。

■関悦史 せき・えつし
1969年、茨城生まれ。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞、第11回俳句界評論賞受賞。「豈」同人。共著『新撰21』(邑書林)。句集『六十億本の回転する曲がつた棒』(2011)にて第3回田中裕明賞を受賞。URL:http://etushinoheya.web.fc2.com/(管理人は別人) URL:http://kanchu-haiku.typepad.jp/blog/(句集紹介用ブログ)

■小川春休 おがわ・しゅんきゅう
1976年、広島生まれ。現在「童子」同人。句集『銀の泡』。サイト「ハルヤスミ web site」

■佐藤文香
1985年生まれ。池田澄子に師事。句集『海藻標本』『君に目があり見開かれ』、詩集『新しい音楽をおしえて』。

■前北かおる まえきた・かおる
1978年島根県生まれ。慶大俳句、「惜春」を経て、「夏潮」創刊に参加する。第1回黒潮賞受賞。句集『虹の島』『ラフマニノフ』。ブログ http://maekitakaoru.blog100.fc2.com/

■猫髭 ねこひげ
「きっこのハイヒール」所属。サイト「三畳の猫髭」

■津川絵理子
昭和43年兵庫県生まれ。平成3年南風入会。句集に「和音」「はじまりの樹」など。
南風主宰(村上鞆彦と共宰)

■藤幹子(ふじみきこ)
炎環同人。年越し蕎麦は合鴨で。


■宇志やまと
長野県生まれ「和賀江」・「群青」同人。2015年第三回「俳句四季」新人賞

■本井 英 もとい・えい
1945年生まれ。「夏潮」主宰、「珊」同人。句集に、『本井英句集』(本阿弥書店 1986年)、『夏潮』(芳文館 2000年)、『八月』(角川平成俳句叢書 2009年)。

■菊田一平 きくた・いっぺい
一九五一年宮城県生まれ。
「や」「晨」同人、俳句「唐変木」代表

■満田春日 みつだ・はるひ
昭和五十八年「海」入会、作句開始。平成十四年「ゆう」入会。十六年第五回「ゆう俳句賞」受賞。十八年「はるもにあ」創刊。「静かな場所」同人。句集に『瞬』『雪月』(ふらんす堂)。

■岩上明美 いわがみ・あけみ
昭和45年埼玉県生まれ。現在静岡県伊豆市在住。藍生所属、俳人協会会員。

■森賀まり もりが・まり
1960年愛媛県生まれ。「百鳥」「静かな場所」同人。

■高勢祥子 たかせ・さちこ
1976年生れ。「街」同人「鬼」会員

■飯田冬眞 いいだ・とうま
1966年札幌市生まれ。「豈」「未来図」同人。俳人協会会員。第29回(2014年)未来図新人賞。句集『時効』(2015年9月・ふらんす堂)。

■岡野泰輔 おかの・たいすけ
船団の会会員 共著に『俳コレ』

■大井さち子 おおい・さちこ
1960年長野県生まれ。「鷹」同人。句集「秋の椅子」(邑書林)。
俳人協会会員

■沼田美山 ぬまた・びざん
1956年東京生まれ、「澤」同人。俳人協会会員。日本アルバン・ベルク協会会員。

■塩見明子 しもみ・あきこ
「田」同人。俳人協会会員

■金原まさ子 きんばら・まさこ
1911年 東京生まれ。『街』『らん』同人。

■藤田 俊 ふじた・しゅん
1980年生まれ。船団の会所属。

■千葉皓史 ちば・こうし
無所属。昭和22生。

■小津夜景 おづ・やけい
1973年生まれ。無所属。

■藤本る衣 ふじもと・るい
1939年大阪生。炎環同人。

■野口 裕 のぐち・ゆたか
1952年生まれ。句集準備中。句稿整理済み。その後の句作から、えらく肩が軽うなる。そのまま出さんのも手かも。

■加藤御影 かとう・みかげ
所属なし。

■馬場古戸暢 ばば・ことのぶ
1983年生まれ。自由律俳句(随句)結社「草原」同人。

■上野葉月 うえの・はつき
年齢国籍性別宗教体重身長スリーサイズ非公開。血圧90-130、γ-GTP60、コレステロール232、A/G1.9、赤血球数481、白血球数67(2009年夏数値)。一家に一台葉月さん! ブログ「葉月のスキズキ」http://93825277.at.webry.info/

■芳野ヒロユキ よしの・ひろゆき
1964年生まれ。静岡県磐田市在住。「船団」会員。

■森山いほこ もりやま・いほこ
1942年福岡県生れ。「街」同人

■石原 明 いしはら・あきら
1946年愛媛県生まれ。神奈川県在住。所属結社なし。

■内藤独楽 ないとう・こま
1969年生まれ、横浜在住。無所属。

■佐藤未都 さとう・みと
1981年生。愛知県在住。

■今野浮儚 こんのうきはか
1980年生。大阪府在住

■岡田由季 おかだ・ゆき
1966年生まれ。東京出身、大阪在住。「炎環」「豆の木」所属。2007年第一回週刊俳句賞受賞。句集『犬の眉』(2014年・現代俳句協会)。ブログ「続ブレンハイムスポットあるいは道草俳句日記」http://blenheim2.blog.fc2.com/

■鈴木陽子 すずき・ようこ
1983年栃木市生まれ。「炎環」所属。

■仮屋賢一 かりや・けんいち
1992年京都府生まれ。自己紹介を詳らかにすればするほど、「結局君はいつどこで何をしているんだ」ってなる人。未だに関西俳句会「ふらここ」代表。YouTubeチャンネル

■近 恵 こん・けい
1964年生まれ。青森県出身。2007年「炎環」入会。同人。「豆の木」メンバー。2013年
第31回現代俳句新人賞受賞。 合同句集「きざし」。

■西川火尖 にしかわ・かせん
1984年生まれ。石寒太に師事。

■豊永裕美 とよなが・ひろみ
1980年栃木市箱森町生まれ。「炎環」「紫」同人。

■中西亮太 なかにし・りょうた
1992年岐阜県生まれ、東京都在住。東京大学大学院在学中。「艀」同人。

■西村小市 にしむら・こいち
1950年神戸市生まれ。埼玉県入間市在住。2007年より「ほんやらなまず句会」参加。「街」・「童子」会員、「いつき組」組員。句集『乱雑な部屋』(2015年・マルコボ.コム)

■島涼風 しま・すずかぜ
2015年夏頃から炎環会員。入会と同時に作句開始。

■安里琉太 あさと・りゅうた
平成六年沖縄県生まれ。中原道夫、佐藤郁良に師事。「銀化」「群青」同人。俳人協会、沖縄県俳句協会、琉球大学俳句研究会a la carteに所属。受賞歴に、第十六回銀化新人賞、第二回俳句四季新人奨励賞ほか。

■中町とおと なかまち・とおと
1979年生まれ。いつき組。句集『さみしき獣』(マルコボ.コム)にて「第4回大人のための俳句を作ろうコンテスト」最優秀賞受賞。

■山田耕司 やまだ・こうじ
俳句同人誌「円錐」 俳句雑誌「クプラス ku+ 」。群馬県桐生市在住。

■岡本飛び地 おかもと・とびち
1984年愛媛県生まれ。無所属。

■宮﨑莉々香 みやざき・りりか
1996年高知県生まれ。「円錐」「群青」「蝶」同人。

■角谷昌子 かくたに・まさこ
「未来図」同人。俳人協会幹事、国際俳句交流協会評議員、日本文芸家協会会員。詩誌「日本未来派」所属。句集に『奔流』『源流』。

■福田若之 ふくだ・わかゆき
1991年東京生まれ。「群青」、「ku+」、「オルガン」に参加。共著に『俳コレ』(邑書林、2011年)。

■村田 篠 むらた・しの
1958年、兵庫県生まれ。2002年、俳句を始める。現在「月天」「塵風」同人、「百句会」会員。共著『子規に学ぶ俳句365日』(2011)。「Belle Epoque」

■西原天気 さいばら・てんき
1955年生まれ。句集に『人名句集チャーリーさん』(2005年・私家版)、『けむり』(2011年10月・西田書店)。ブログ「俳句的日常」 twitter

■上田信治 うえだ・しんじ
1961年生れ。共著『超新撰21』(2010)『虚子に学ぶ俳句365日』(2011)共編『俳コレ』(2012)ほか。


〔今週号の表紙〕第454号 冬日 西原天気

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〔今週号の表紙〕
第454号 冬日

西原天気


出窓に置きっぱなしの植木です。



週俳ではトップ写真を募集しています。詳細は≫こちら


〔今週号の表紙〕第455号 渡良瀬遊水地・谷中湖上、中の島へ向かう道 トオイダイスケ

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〔今週号の表紙〕
第455号 渡良瀬遊水地・谷中湖上、中の島へ向かう道

トオイダイスケ



昨年故郷の生家を引き払ってから、自分が普段の日々を暮らし過ごす場所について考えるというか、日々暮らす場所の地形や気候や歴史を体で感じようとすることが増えた気がします。東京都心のやや外側、北豊島郡と呼ばれていた地域に引越してからそう思うようになるまで、15年近くも経っていました。

生まれてから18年間過ごした街や風土やその周辺の地域の光景は、やはり自分の体や感覚にとって懐かしく自然で、自分というものの延長のように (もしくは、佐野や両毛地域やその周辺の様々なものが寄り集まって自分というものになっているように)感じました。

句を作るときや曲を作るまたは弾くときにも、その感覚を通じて故郷の景や匂いを思い出すことももちろんあるのですが、ひさしぶりに訪れたこの場所は正月三日の穏やかな陽射しを受けて、想像していたよりも遥かに青く柔らかく輝いていました。



週俳ではトップ写真を募集しています。詳細は≫こちら

〔ハイクふぃくしょん〕限界と終局 中嶋憲武

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〔ハイクふぃくしょん〕
限界と終局

中嶋憲武
『炎環』2013年6月号より転載

どれくらい経ったのだろう。仕事で近くまで来たので、懐かしくなって寄ってみたが、あの頃と同じ様子で建っている。木造モルタル造りの二階建て。破風の白いところに「あけぼの荘」と墨文字で太々と書かれてある。ブロック塀が周囲を囲い、入口は両脇が角柱になっていて、丸い門灯がそれぞれに鎮座している。辺りがうす青い闇に変じて来ると、橙色の明りがぽっと灯る。きゅるきゅると軋む引戸を開けると広めの玄関で、下駄箱へ運動靴(あの頃はスニーカーなんて言わなかった)を仕舞い、階段を上がって廊下を少し歩いたところの角の六畳間が、わたしのアジールだった。合鍵を鍵穴に差し込んで左へ数回廻して戸を引き開け、この戸は開く時、ぎゅるぎゅると神経に障るような音を立てた、部屋へ入るとすぐに流しと一口コンロがあり、右側の障子を開けると六畳の城。トイレは共同で風呂無し。わたし達はもっぱら銭湯へ行った。絵描きの彼の部屋へ、わたしは転がり込んでいた。書物、スケッチブック、イーゼル、カンヴァス、油絵の道具。そんな物が部屋を占領していて、居場所は二畳くらいのスペースしかなかったけれど、そんな事はちっとも気にならなかった。装飾品と言えば、映画雑誌から切り抜いたらしいジーナ・ロロブリジーダのモノクロ写真が画鋲で留めてあるだけ。彼は看板描きのアルバイトからまだ帰って来ていなかった。

食べる物が無くて新聞紙食ったよ。彼は言って笑った事もあった。絵が少々売れるようになっていた彼は、過去の悲惨をファルスにしてしまえる心の余裕を持っていた。毎日が不安に押し潰されそうだったはたちのわたしには、その余裕がとても羨ましく映った。わたしはストーブの上に薬缶を置いて彼の帰りを待つ。カンヴァスに彼が描き散らした様々な色彩に囲まれて、オーネット・コールマンを低く流す。読みかけのホイジンガを開く。薬缶がしゅんしゅんと白い息を吐き始める頃、彼が帰って来る。わたしのかけがえの無い時間が、そこには確かにあった。

頭蓋にオーネット・コールマンが小さく響めいていた。わたしはあけぼの荘の前に佇んでいた。よく見るとあちこち相当傷んでいる。窓ガラスが割れて、そのままになっている部屋もある。青い闇が周囲を満たしても、壊れているのか門灯の点く気配は無い。軋む戸が開いて、内側の暗闇からペルー人と思しき男が一人出て来た。胡乱な一瞥をくれて、出掛けて行った。オーネット・コールマンはだんだん大きくなって、アルト・サックスが最早半狂乱の頂点へ螺旋を伸ばして行った。あけぼの荘の壁が剥がれ出し、めきめきと罅割れたかと思うと、生木の裂ける音が轟き、ガラスが飛び散り、瓦が吹っ飛び、土煙を上げて建物は崩落した。

わたしはふと会社へ戻らなければと思った。うすら寒い銀白色の街灯が灯り、陰気なオルゴールの流れる商店街を、駅に向かって歩いて行った。

寒オリオンあけぼの荘に灯のふたつ  岸ゆうこ

【八田木枯の一句】一月や附箋のごとく死のごとく 西原天気

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【八田木枯の一句】
一月や附箋のごとく死のごとく

西原天気


一月や附箋のごとく死のごとく  八田木枯

「附箋のごとく死のごとく」あるのは、いったいなんでしょうか。

「や」で切れてい入るものの、一月が、ということか。

あるいは、なにもかもが、ということか。

あるいは、あるもの、あることは、とうことか。

なにがしかの(私的・公的な)出来事を、私たちは、のっぺりとした時間の流れの途中に、ひとりでどんどんめくれてしまうページの途中に、「附箋」を貼るように、印象として刻み、(しばし)記憶にとどめます。

死もまた、そんな附箋のひとつでしょう。

知らぬ間に剥がれ落ちている、という点でも、誰かの死は附箋と似ているかもしれません。

掲句は第4句集『天袋』(1998年)より。


ピエール・ブーレーズ(1925年3月26日 - 2016年1月5日)



【柳誌を読む】『川柳ねじまき』第2号(2015年12月20日) 西原天気

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【柳誌を読む】
『川柳ねじまき』第2号(2015年12月20日)

西原天気


発行人:なかはられいこ。A5判、本文58ページ。

同人諸氏作品(各々見開きに20句)より一句ずつ。

湿布貼ったとこからすっと船が出る  なかはられいこ

かばんからかなりうれしい唐辛子  二村鉄子

ユーチューブ飲んで炎上する胃壁  丸山進

しゃっくりも督促状も螺旋状  三好光明

向こうも夜で雨なのかしらヴェポラップ  八上桐子

解剖図おなじ匂いをさせている  米山明日歌

泡だったままで閉店いたします  青砥和子

靴下の穴のカタチは愛知県  安藤なみ

図書室にチンダル現象そして秋  魚澄秋来

喰う奴をじっと睨んでいるウナギ  北原おさ虫

泣くたびに胸で渦巻くかたつむり  妹尾凛

着信音ホチキス綴じの夜空から  瀧村小奈生

こわごわと百から七を引いてゆく  中川喜代子

肋骨を夜の電車が通過する  ながたまみ


ほか、瀧村小奈生「ねじまき句会を実況する」などの記事。


ウェブサイト「月刊★ねじまき」
http://nezimakiku.exblog.jp/



自由律俳句を読む 123  「鉄塊」を読む〔9〕 畠働猫

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自由律俳句を読む 123

「鉄塊」を読む9



畠 働猫



年始早々より痔瘻の手術により入院中の働猫です。難病です。



抗生剤を投与されているためか、長く患っていた外耳炎もついでに治りかけている。禍福は糾える縄の如しである。

院内はWi-Fi環境が整っているため、今回の原稿は病室から送ります。







「鉄塊」の句会に投句された作品を鑑賞する。

今回は第十回(20132月)から。







◎第十回鍛錬句会(20132月)より



くしゃみしたら空が破れてね 渋谷知宏

いかにも大袈裟である。杞憂の故事を思い浮かべた。

ただ、そうした気分になることはある。大きなくしゃみを誰に気兼ねなくすることはちょっとしたカタルシスを味わうことができるものだ。

しかし今、尻を切り尻を縫った身としては、違う意味でこのような状況にある。

破れたら大変なことになり、ナースコールを押さなくてはならない。

怖ろしい。



立春すでに燃えカス 渋谷知宏

どんど焼きのことであろう。

正月飾りやお守りなどを神社に持ち寄り、焼いてもらう。

かつて子供の頃に親しんだ行事であるが、現在まったく無縁になってしまった。自分の生活様式が変わったためか、社会の変化のためかはわからない。

もう十年ほど前になるのだろうか。ダイオキシンなどの化学物質が身体に深刻な悪影響を及ぼすと「環境ホルモン」と呼ばれ規制の対象になった。

ごみの焼却時に発生するということで、全国の学校から焼却炉が撤去されたのもそのためだった。同じく、どんど焼きのような火祭りについても、環境への配慮から行われなくなっていったように記憶している。

燃やすものを分別し、続けようとしていた神社もあったようだが、現在どうしているのかわからない。

詠者の近隣ではまだ行われているのだろう。懐かしい風景である。



何のおまつりかは関係ない犬がきた 渋谷知宏

「犬」というものの特性を捉えた佳句と思う。

以下に当時の句会での私の句評を再掲する。



「かわいい。犬にはハレもケもない。にぎやかなお祭りだろうと、慰霊や鎮魂の祀りであろうと。ただ人が集まっているから、舌出して来たのだろう。『へっへっへっ』と。石畳をちゃっちゃっちゃっと歩く足音が聞こえるようだ。猫派の偏見かもしれないが、犬はバカっぽい方がかわいい。」



犬に対する自分の印象に変化はない。

人だかりや祭りがあれば寄って行くのが犬で、背を向けるのが猫であるように思う。ただ、苦しいときや悲しいときにはどちらも寄り添ってくれるのだから動物って本当にかわいい。猫かわいい。



また音痴を聞かされる梅が枝 白川玄齋

ジャイアンリサイタルしか浮かばなかった。

あの土管の空き地にも四季がめぐるのである。



忙しいという時も過ぎて夕暮れ 白川玄齋

気がつけば日が暮れていたということか。

普段、朝も夜もなく働いているため、夕暮れ時になると「夜の部が始まったな」と思う程度に、私は社畜である。忙しくしていると時間の流れは本当に早く感じるものだ。

入院してみると時間の流れの緩やかさに驚く。

入院中は本でも読もうかといろいろ持ってきたものだが、案外読めない。

忙しくはない代わりに、回診だ食事だ消灯だと時間を管理される煩わしさとぶつ切りされた中途半端な時間を持て余すばかりである。管理される側、保護される側というのは本当に苦手だなあと思う。



自分だけが知っている名前ばかりのアドレス帳 白川玄齋

ちょっと意味がとり辛いが、「俳号」によって登録されているということのようだ。

本来、実名が私的なもので、号の方が公的なものであると思うのだが、その号が「自分だけが知っている」ものと表現されているところに、自由律俳句の置かれている現状が表れていると言える。



ひどすぎるブログを更新 中筋祖啓

なんだろう、「元気が出るテレビ」だったろうか。個人で建て増して建て増して作ってしまった悪夢のようなテーマパークをテレビで観たことがある。特殊なケースとは思うが全国各地にあるようなので、一種の類型ではあるのだろう。妄執や病を感じさせるそうした施設は、同時に非常に興味深いものでもあった。

「ひどすぎるブログ」の更新もコンコルド症候群のように、もはや引くに引けない行為なのだろう。



握手は全部トラウマだ 中筋祖啓

手汗か静電気か。アメリカ式でギューッとされたのか。



袋を開ける事が発作 中筋祖啓

やめられない止まらないかっぱえびせんであろうか。

袋菓子依存と見るよりは、発作的にバーンと袋を開けてぶちまけている感じの方がふさわしい。

よくわからないがパーティー開けをしているように思う。



不意の知人へ笑顔をつくる 馬場古戸暢

「会うはずのないところで職場の同僚などに会った情景と読みました。笑顔という仮面を瞬時にかぶる様子。日常にある緊迫の場面です。自嘲を読み取りました。」



当時の句会での自評を再掲した。

自分もいつも公的な仮面をかぶっているため、実によく経験する状況である。

一人で車を運転しているときが最もリラックスできる。

現在、病室は四人部屋であるため、常に公的な自分でいるようであり、少々気疲れしている。

災害や紛争により、今なお避難所で暮らしている方々の心労を思う。



家出したいと言う一人暮らしの女といる 馬場古戸暢

「『一人暮らしのくせに』というのが中心なのか、『不思議なことをいう女だかわいい』が中心なのかよくわからなかったです。」



上記が当時の自評であるが、もう少し遠慮なく言えば、こういう女性は好きではない。なんとなく「持ちネタ」感が鼻につくのである。くだらないことを言うくらいなら黙っていたほうがずっとましである。



おばあちゃんと歩く女はゴスロリ 馬場古戸暢

場違い感を詠んだものであったかと思うが、現在はあまり違和感がなくなっているように思う。共和国の首都札幌でも見かけるようになった。

ファッションの変遷はあまりに早い。いずれはおばあちゃんがゴスロリの時代も来るだろう。



雪に顔突っ込んで姑の悪口 藤井雪兎

王様の耳はロバの耳である。

雪は音を吸収してしまうため、聞かせたくないことを叫ぶには実に合理的であると言える。

雪の夜の静寂と雨の夜の饒舌と、その両方を知っているということは、雪国に育ったものの特権と言えるだろう。



救助された男の目に満月 藤井雪兎

映画的な情景描写である。

水害か山で遭難した男がヘリコプターに吊られていくのが見える。

この句では、詠者がどこにいるのかわからない。

視点的に考えれば、まさに救助しているレスキュー隊員が詠んだ句であるように思う。

恐らくは、実景に想像を加えることで、映画監督のように見たい景色を見たい角度から切り取っているのだ。時に戯画化と言ってもよいような、こうした第三者的な視点も雪兎の特徴であると言える。



ひび割れた眼鏡で時間通りに来た 藤井雪兎

この句は当時の句会で特選にとった。

以下はその際の自分の句評である。



「今回は特選については迷わずに決められた。だんだん近づいてくる姿、その情景が見える。やってきた男(女としては読めない)のパーソナリティや自分(作者)との関係性をいろいろ想像できて楽しい。『いったい何があった?』と心配したり、『眼鏡割れるほどの苦境を乗り越えて時間通りに来る律義さ』を読んだり、『眼鏡には頓着しないくせに時間は守るのかよ』と読んだりして楽しい。でも実際にはそんなにコミカルな状況ではなかったりして……とか考えるのも楽しい。」



少し違っている点として、現在の自分は「女」としても読めるということだ。

ドジっ子を許せる程度に成長したのである。



七度八分で氷柱細くなった 本間鴨芹

熱の日。学校を休んで窓から外を見ている。

昼になり、窓のつららもすっかり細くなってしまった。

罪悪感や気まずさを感じながら、咳などしてみる。

そんな情景を思い出した。

ノスタルジックである。

現在の病室では、廊下側であるためこういう句は拾えない。向かいの個室のおばさんの電話の声が大きすぎるとか、そんな素材ばかりである。



時計屋さん正しい時刻はどれですか 本間鴨芹

時計屋は時計を売っているのであって、時刻を売っているわけではないということか。うまいことを言えたように思うがどうか。



いいわけない助手席に長い髪の毛 本間鴨芹

「助手席の髪の毛はちょっとありがちかなと思った。掛詞を先に思いついてそこに寄せていったんじゃないかなあ。

評の通り、掛詞のユーモアで作りましたね?という感じです。浮気や不倫の暗さは鴨さんには感じられないのだ。よほど巧妙に隠してるのかもしれないけど。

髪の毛でなく『わざと置いて行った片耳だけのピアス』あたりだと生々しくなりますよね。それももう古いのかなあ。」



上記が当時の自評であるが、なんともべたべたした感じで気持ち悪いな。

クソリプっぽい。



さよならのかたちのまま手袋を脱ぐ 松田畦道

美しい句である。

当時の自評を再掲する。



「きれいだなと思った。駅のホームで恋人に手を振って別れたあと、車内で手袋を脱ぐのだろう。手袋の形がそのまま別れの余韻となって寂しさを募らせるのだろう。ただ、なんとなく余裕が感じられる。これは、また会える『さよなら』なのだ。永遠の喪失ならば手袋は脱げない。お別れのイベントを消化して、やれやれ駅弁食べるかなあと手袋脱いだんじゃあないかな。あれ、そう考えるとあんまりきれいでもなくなってきた。むむ?

『さよならのかたち』は自分も手のことだと思っていましたが、手の形ではないのかもしれませんね。姿勢、佇まいあるいは心そのものが『さよならのかたち』であって、そのまま手袋を脱いだということなのでしょう。駅弁もぐもぐとか失礼なことを書いてしまった気がします。」



「さよならのかたち」は後半の佇まいの方であろう。

永遠の喪失ではない、という解釈は今でも同じである。

また会える別れ。それは幸福の一つであるように思う。人生における希望であるからだ。



ふたりだけの星座を結んで帰ろう 松田畦道

歌謡曲の歌詞のようでもあるが、美しい景である。

手をつなぎ夜を歩くのだ。

帰る先が同じであるのだから、同棲中か夫婦なのだろう。

立ち寄る先を星に見立てて、二人の軌跡を星座と呼ぶのだろう。

「神田川」やチャアミイグリーンのCMを思い浮かべる。

仲のいいことはよいことである。

この原稿を書いているのが土曜日であるためか、同じ病室の他三人のもとには、嫁や家族がお見舞いに訪れており、私だけ独りぼっちである。

真剣に婚活を考えるべき時が来たのであろうか。変な汗が出る。



改築とは寒椿を伐り倒すことでもあったか 松田畦道

佳句と思う。当時の自評を再掲する。



「聞いてないよ、という感じか。何かを新しく行う、始めるというときには、得てして喪失が伴う。経験上それを知っていたとしても、実際に目に見えるまで気づけないことがある。寒椿が象徴するものを読み手は自分の経験の中にそれぞれ見出すだろう。」







*     *     *







以下三句がこの回の私の投句。

まだある鼓動聞いて眠る 畠働猫

五つずつ数を数える正しくなくとも正しくなくとも正しくなくとも 畠働猫

結婚刻んだ皺見せられてる同窓会 畠働猫



一番下の句などは今や赤面の至りである。

駄句にもほどがある。

さて尻の痛みも強くなってきたため、今回はここまでとしたい。

なんとか消灯時間にも間に合い、看護師さんに怒られずに済みそうである。

尻の弱みを握られているため、今私はひたすらに従順である。







※訂正

 前回の記事の最後で次のように述べた。



「以前、句友の小澤温(おざわ はる)が、『短律の自由律俳句は、それ自体が季語になろうとしている』というようなことを語っていて、ひどく納得したことがある。」



この「短律の自由律俳句は、それ自体が季語になろうとしている」という発言は、小澤ではなく矢野錆助が元であったようだ。

どちらであっても(我々三人にとっては)大きな違いはないが、一応訂正する。

もっと早く誰かが言っていることかもしれないし、誰が言ったのかということはそれほど重要でもないだろう。






次回は、「鉄塊」を読む〔10〕。

【週俳12月の俳句・川柳を読む】 透明感のあるゴツゴツとか、落ちそうで落ちないとか 上田信治

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【週俳12月の俳句・川柳を読む】
透明感のあるゴツゴツとか、落ちそうで落ちないとか
上田信治


壮年の景 角谷昌子 

この人は「ゴツゴツとありたい」のだろう、と思いました。

夭折にあこがれしこと石蕗の花」「ざくざくと落葉踏みゆきことば欲る」「北風の鳴ってゐるなり薔薇の蔓」「なにやらの獣骨脆し枯野原」などなど。

2016年の角川俳句年鑑の自選句にも「カンナの緋鉄の扉に鉄の錠」「鹿のこゑ月下の森をふるはする」「赤貧のさまに鳴るなり枯蓮」などあり、こちらもゴツゴツ。

壮年の景甲斐駒を雪が攻む 角谷昌子

作者が、ゴツゴツの冬山をほめるとき、同時に、そのような人をほめ、またそのような人をほめる自己像を浮彫にしている。

物質的対象から、人、思いなどへとイメージがうつろうときに生まれる、透明感のあるゴツゴツとでもいうべき在りようが美しい。


以後 太田うさぎ

葉牡丹に日の差す伊勢の漬物屋 太田うさぎ

葉牡丹に日が差すことは季語との約束ですが、「日の差す伊勢の」とつなぎ「漬物屋」とつなげば、それはさらさらと描かれる水彩のスケッチの筆勢のようなもので、浮かんで消えるモチーフの筆まかせの恣意性が、お楽しみの本丸なのだと思います。

沛然と雨の港区神の留守 同

こちらは「神の留守」という季語が、お筆先のような恣意性をもってあらわれる。そこに自由の感触があります。「闇鍋の蓋の大きな明石かな」「かかるほどに蠟月闌くるをぐらあん」もまた。

「雨の港区神の留守」の、俳句っぽくない調子の良さが、いい意味でとても気になります。


狐罠 西村麒麟

水浅きところに魚や夕焚火 西村麒麟
紙振つて乾かしてゐる十二月 同

小唄のような軽い詠みぶりで魅せることの多い作者ですが、掲句のような、感覚的実質があってなおかつ簡単に尻尾をつかませない取り合わせを見ると、なるほど長谷川櫂門下の人だなあと。

水仙や長距離を行くフリスビー 同

モチーフの軽さが楽しい句ですが、ナルキッソスの神話から、夭折とか青春のはかなさ方面に連想を飛ばして読むのもアリかも。中七下五の語の斡旋が、落ちそうで落ちないフリスビーと相似形をなしています。


月曜日の定食 相子智恵

曜日はカレンダー上の言葉であって、物質世界との紐帯が弱い。

作者が、月曜日を週日のアタマ、ゴミ収集日等として、つまり「嵌めて鳴る革手袋や月曜来」「ゴミ袋に割り箸突き出雪催」「吊革のマスクに隣る吾もマスク」のように書くのは、この人がつくづく現実重視、実感重視の人であるから。

月曜のB定食の牡蠣フライ 相子智恵

どうしようもない偶然としての曜日が、牡蠣フライという質量をともなって目の前にある。これ、店頭の見本かもですね。

吹き上ぐる落葉の中の母子かな 相子智恵

母が幼子を抱き「ジョジョ立ち」しているのかもと思わせるような、かっこよさ。


水曜日の変容 関悦史

輪郭のうすれて冷えて水曜日 関悦史
冬けふも居間占むる象気にとめず 同
テニスしてをりしがいつか枯草に 同

古い友人である栗城さんは、関さんが不調や不眠を訴えるツイートを連投していると、関くん絶好調だなと思うのだそうで(「第三回田中裕明賞」冊子P155)、どうも関さんは、冬が多産期であるような気がします。


兼題「金曜日」 樋口由紀子

相子さんのところでも書きかけましたが、曜日というのは、質量も季節性も、多くの場合文脈すらしょわない質量0の語彙です。

こういった空っぽの語が、テキストに、いわゆる空項として、あらゆる言葉を代入可能な(   )として、書かれる場合がある。樋口さんのこの連作においては「金曜日」が、空項として書かれています。

これは「アメリカの鱒釣り」方式ですね。なにかがあった場所に穴が空いていて、その穴が、テキスト全体を非日常化する。

穴が空いて詩になってしまったテキストは、全ての質量を失うのですが、そこに思い出のように、残留思念のように(といったら幽霊になるのか)、呼びかけてくるものがある。

あの川を金曜日と呼ぶことに 樋口由紀子

なにかがしきりと呼びかけてくるのだけれど、その物語は、二度と形にならないのです。


第451号 2015年12月13日
相子智恵 月曜日の定食 10句 ≫読む
関 悦史 水曜日の変容 10句 ≫読む 
樋口由紀子 兼題「金曜日」 10句 ≫読む
第452号 2015年12月20日
角谷昌子 壮年の景 10句 ≫読む
太田うさぎ 以 後 10句 ≫読む 
西村麒麟 狐 罠 10句 ≫読む


名句に学び無し、 なんだこりゃこそ学びの宝庫(21) 今井聖

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名句に学び無し、
なんだこりゃこそ学びの宝庫 (21)
今井 聖

 「街」第115号より転載

約束の寒の土筆を煮て下さい 川端茅舎  『白痴』(1941)

なんだこりゃ

と思っただろうな。この句を初めて見た読者は。

 ヤクソクノカンノツクシヲニテクダサイ

昭和十六年に四十四歳で亡くなった茅舎の没年に作られた句。

この有名な句、例によって茅舎がいつどこで誰に向かって「煮てください」と頼んだのかなどという評釈が定番化している。

つまらない。そういう論議はわざと本質を避けているような意図さえ感じる。

そんなことより虚子から「花鳥諷詠真骨頂漢」と呼ばれた茅舎である。その教祖認定の真打が作った口語、命令文(祈願文?)である「下さい」を考える必要がある。

茅舎には、

金剛の露ひとつぶや石の上
蛙の目越えて漣又さゞなみ
金輪際わりこむ婆や迎鐘
百合の蘂皆りんりんとふるひけり
ひらひらと月光降りぬ貝割菜
ぜんまいののの字ばかりの寂光土
咳き込めば我火の玉のごとくなり
花杏受胎告知の翅音びび
朴散華即ちしれぬ行方かな

などの喧伝される名句がある。

金剛の句の非科学の造型力や蛙の目の文体の新鮮さ。この句から鈴木六林男さんの「暗闇の目玉濡らさず泳ぐなり」を思うけど、比較すると蛙の目の句の方が隠喩としてどこまでも跳べる。優れた写生句は凝視がそのまま隠喩になるんだな。

ただ、順序としては凝視の結果としていうのが重要。この順序を外して隠喩への意図を優先させると「実るほど頭を垂れる稲穂かな」のごとき箴言や警句になる。

六林男さんのは後者に近い。最初から隠喩を意図して書かれている。戦後派の暗い内部意識、荒地派の手法だ。パクリとは言わないが自由詩のモダンに対する憧憬が根っこにある。その憧憬こそ「卑屈」ではないか。

これはまあ僕の意見。

りんりん、ひらひらのオノマトペの絶妙。直喩や想像力の深さ、鋭敏さ。どれをとっても一級。今日見てもいっこうに古さを感じない。花鳥諷詠かどうかは別にしても俳句の「真骨頂漢」であることは間違いない。

一方で茅舎には、

破芭蕉猶数行をのこしけり
秋風や袂の玉はナフタリン
牡丹雪林泉鉄のごときかな
白雪を冠れる石のかわきをり
寒月や穴の如くに黒き犬
暖かや飴の中から桃太郎
梅咲いて母の初七日いゝ天気
横たはる西瓜の号はツエペリン
尾をひいて芋の露飛ぶ虚空かな
誰が懐炉涅槃の足に置きわすれ
秋風に浴衣は藍の濃かりけり
糞壺の糞の日に寂び霜に寂び
雪の原犬沈没し躍り出づ
朝靄に梅は牛乳より濃かりけり
春の土に落とせしせんべ母は食べ
落葉掃了へて今川焼買ひに
栗の花白痴四十の紺絣
また微熱つくつく法師もう黙れ
咳かすかかすか喀血とくとくと

等のヘンテコ句がある。

破芭蕉の句は芭蕉の葉が破れた形を文章の行に喩えた。

寒蝉のただ数行を鳴きしのみ 誓子
雪の日暮れは幾度も読む文のごとし 龍太

これらの句の原型をみる思い。

ナフタリンや桃太郎やツエペリンの句は現代の機智俳句と並べても十分四つに組める。
牡丹雪、尾をひいて、誰が懐炉、糞壺、春の土、落葉の句などは即物非情緒で俳句スポーツ説の波多野爽波やヘンテコ博士田川飛旅子も真青の写生句だ。

そして冒頭の句に並んで、梅咲いて、また微熱、もう黙れ、の内容もさることながら独自の融通無碍なリズム、韻律、文体。

今の「伝統」俳人はやたら前例があるかどうかに神経質になっているような気がする。前例があるから避けて通るというのが本来創作者の矜持と思うがまったく逆。前例が無いものは認めないという方向である。

切れ字「や」を使うと意味も切れなければならないという思い込み。蛇笏の「流燈や一つにはかにさかのぼる」のような主格の「や」もあるのに。
季語が必ず要るという思い込み。季語というのは季節を表す言葉ではなく虚子編の歳時記に記載されているかどうかという基準になっている。ものすごくヘン。
季語は一句に一つが望ましいという秀句製作ノウハウの効率を重視した思い込み。
季語の本意という印籠をかざしての類型的情緒の肯定。
文体の前例、先例を踏むこと。

過日、現存する有名俳人の句で「下さい」で終わる俳句の鑑賞の依頼があった。

僕は内容云々よりも、そもそも茅舎の文体をそのまま用いるところが作家意識の低さというか、志が足りないという意味のことを書いたのだった。

十七音定型の枠にはさまざまな定番慣用文体があって、それを用いるのはまあ仕方がない。そこを否定すると書けなくなる。

しかし、その俳人が編み出した奇跡のような独自の表現を先例として借用するのは鋳型だけの拝借として済ませる問題ではないだろう。

或るときその話を若手の人たちの前で話した。

「下さいじゃなくて、くだせえとか、くれよとか、くださらんかくらい言ってくれれば認めるんだけど」

みんな笑った。

でもオリジナルとはそういう問題ではないのか。一字に細心で大胆な冒険を意図すること。

一字違えば別もんだ。

僕は「くだせえ」をおちゃらけの受け狙いで出したわけではない。発言の背景には、大好きなシンガーソングライター友部正人さんの歌「乾杯」があった。


いまだにクリスマスのような新宿の夜一日中誰かさんの小便の音でもきかされてるようなやりきれない毎日北風は狼のしっぽをはやしああそれそれってぼくのあごをえぐる誰かが気まぐれにこうもり傘を開いたように夜は突然やって来て君はスカートをまくったりくつ下をずらしたり
おお せつなやポッポー500円分の切符をくだせえ

500円分の切符をくだせえ。茅舎の句に「下さい」があるから俺はくだせえって言う。そんなちょっとの勇気さえ無いのかよ、俳人よ、てめえは。


なんだこりゃこそ学びの宝庫。




後記+プロフィール 第455号

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後記 ● 福田若之

そういえば、去年は、ときどき、このくらいの時間に、うちの前を歌いながら自転車で疾走していくひとがいたのですが、最近はあのひとの声を聞いていません。

姿を見たことはないのですが、そして、歌詞までは聞き取れないのですが、たしかに、なにか言葉らしきものを歌っているのが聞こえて、ドップラー効果の感じで、ああ、自転車だ、と分かるのです。

寒いから、でしょうか。春になったら、また、あのひとも歌うのでしょうか。

漕ぎながら。



それではまた、つぎの日曜日にお会いしましょう。


no.455/2016-1-10 profile


■畠 働猫 はた・どうみょう
1975年生まれ。北海道札幌市在住。自由律俳句集団「鉄塊」を中心とした活動を経て、現在「自由律句のひろば」在籍。

■今井 聖 いまい・せい
1950年生まれ。加藤楸邨に師事。「街」主宰。句集に「谷間の家具」「バーベルに月乗せて」など。脚本家として映画「エイジアンブルー」など。長編エッセイ『ライク・ア・ローリングス トーン』(岩波書店)、 『部活で俳句』(岩波ジュニア新書)など。「街」HP

■トオイダイスケ とおい・だいすけ
1982年栃木県佐野市生まれ。東京都在住。澤俳句会所属。 URL: http://daisuketoi.com Twitter: @daisuketoi


西原天気 さいばら・てんき
1955年生まれ。句集に『人名句集チャーリーさん』(2005年・私家版)、『けむり』(2011年10月・西田書店)。ブログ「俳句的日常」 twitter

■上田信治 うえだ・しんじ
1961年生れ。「里」「ku+」所属。共著『超新撰21』(2010)『虚子に学ぶ俳句365日』(2011)共編『俳コレ』(2012)ほか。

福田若之 ふくだ・わかゆき
1991年東京生まれ。「群青」、「ku+」、「オルガン」に参加。共著に『俳コレ』(邑書林、2011年)。

週刊俳句 第455号 2016年1月10日

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第455号
2016年1月10日


2015 角川俳句賞落選展 ≫見る
2014「石田波郷賞」落選展 ≫見る

 自由律俳句を読む 123
「鉄塊」を読む〔9〕 ……畠働猫 ≫読む

名句に学び無し、なんだこりゃこそ学びの宝庫(21)
約束の寒の土筆を煮て下さい 川端茅舎……今井 聖 ≫読む

〔ハイクふぃくしょん〕
限界と終局……中嶋憲武 ≫読む

【柳誌を読む】 
『川柳ねじまき』第2号(2015年12月20日)
……西原天気 ≫読む

連載 八田木枯の一句
一月や附箋のごとく死のごとく……西原天気 ≫読む

【週俳12月の俳句を読む】
上田信治 透明感のあるゴツゴツとか、落ちそうで落ちないとか ≫読む


〔今週号の表紙〕渡良瀬遊水地・谷中湖上、中の島へ向かう道……トオイダイスケ ≫読む

いわき市復興支援 プロジェクト傳カレンダー頒布のご案内 ≫読む

後記+執筆者プロフィール ……福田若之 ≫読む


 
週刊俳句編『子規に学ぶ俳句365日』発売のお知らせ ≫見る





週刊俳句編『虚子に学ぶ俳句365日』発売のお知らせ ≫見る




 
 ■新アンソロジー『俳コレ』刊行のごあいさつ ≫読む
週俳アーカイヴ(0~199号)≫読む
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後記+プロフィール 第456号

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後記 ● 村田 篠

月曜日に書いています。

東京はこの冬はじめての雪でしたが、早々に雨に変わりました。去年は帰省先で元旦から降り始めた雪がかなり積もり、雪景色の写真をたくさん撮ったのでした。1年の経つのは早く、今日はといえばすでに1月の18日、1月の過ぎるスピードも相当なものです。

遅ればせながら、今年もどうぞよろしくお願いいたします。



それではまた、次の日曜日にお会いしましょう。


no.456/2016-1-17 profile

■今泉礼奈 いまいずみ・れな
平成六年、愛媛県松山市生まれ。「南風」会員。

■橋本 直 はしもと・すなお
1967年生。「豈」同人、「鬼」会員。「俳句の創作と研究のホームページ」

■西村麒麟 にしむら・きりん
1983年生れ、「古志」所属。 句集『鶉』(2013・私家版)。第4回芝不器男俳句新人賞大石悦子奨励賞、第5回田中裕明賞(ともに2014)を受賞。

■岡野泰輔 おかの・たいすけ
船団の会会員。共著 『俳コレ』『季語キラリ』『漱石東京百句』『俳句の動物たち』。

■野口 裕 のぐち・ゆたか
1952年生まれ。句集準備中。句稿整理済み。その後の句作から、えらく肩が軽うなる。そのまま出さんのも手かも。

■岡本飛び地 おかもと・とびち
1984年愛媛県生まれ。無所属。

西原天気 さいばら・てんき
1955年生まれ。句集に『人名句集チャーリーさん』(2005年・私家版)、『けむり』(2011年10月・西田書店)。ブログ「俳句的日常」 twitter

■村田 篠 むらた・しの
1958年、兵庫県生まれ。2002年、俳句を始める。現在「月天」「塵風」同人、「百句会」会員。共著『子規に学ぶ俳句365日』(2011)。「Belle Epoque」

〔今週号の表紙〕第456号 夜の辻 西原天気

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〔今週号の表紙〕
第456号 夜の辻

西原天気



事件など、なかなか起こりません。でも、むかし、20歳くらいの頃、ひとりで夜の住宅街を歩いていると、とつぜん、「シンちゃん!」の声がして腕をつかまれたことがあります。わたし、本名も「シンちゃん」じゃありません。

「ほんともうどこ行って……」とことばが終わる前にその手を離した女性は、いわゆる水商売風。すぐに人違いに気づき、「すみません」と小声で言って小走りで去っていきました。後ろ姿がよほど似ていたのか。

どのくらい帰っていないのだろう。悲痛な声だったなあ。偶然見つけて、やっと会えて、うれしかったのだろうなあ。

シンちゃん。早く顔見せてあげなよ。



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【八田木枯の一句】驚けば驚く鼠冬に孤り 西村麒麟

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【八田木枯の一句】
驚けば驚く鼠冬に孤り

西村麒麟

『八田木枯少年期句集』より。

驚けば驚く鼠冬に孤り  八田木枯

私がわっと驚くと、鼠の方もわっと驚きましたよ、それだけの句ですが、妙に味わいがあります。

鼠がちょっと立ち上がって手をあたふたとさせ、ギョッとした顔で、渾身の驚きを表現する、まさにびっくり。なんせ命懸けですから。

私がびっくりした何十倍も鼠の方が驚いたに違いない、そう考えるとちょっと面白い。私が逆の立場であったなら、恐怖でひっくり返ってしまうことだろう、なんてことを想像する。

くくく

と笑ってみる。冬に孤り。

しばらくして、思い出してはまた少し笑う。

私がわっ! 鼠もわっ!

くくく。

静かな冬だなぁ。


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