佐藤念腹・年譜
ブラジル移民佐藤念腹読書会レポート 〔3〕佐藤念腹100句
ブラジル移民佐藤念腹読書会レポート
「ホトトギス」四月の雑詠句評会(第二十九回)に念腹の巻頭句「雷や四方の樹海の子雷」が取り上げられた。評者は虚子・素十・秋櫻子の三人。各人の評価は次のようであった。秋櫻子「念腹君が近来しきりにつくりつゝある南米開拓事に関する句の中でも特にこの句は優れてゐると思ふ。大森林の中の僅かな土地が墾かれたのみで四方は悉く樹海と稱してもよい程の木立である。南米のことだから気像は今が夏にあるらしい。大きな雷が一つ鳴りはためくとその谺が四方の樹海にこもって多くの雷がいつまでも喚いてゐる様な気がするといふ句である。雷の谺を子雷と云って小雷と云はなかった処など非常に面白い。一句を全体としても誠に雄渾な叙法で頭から強い力で押しつけられるやうな気がする。他の四句の内「父母」の句や、「夕立中」の句などは多少生活に対する同情によって牽き付けられる処もあるが、此句に到っては眞向から文句なく芸の力で押される。」素十「秋櫻子君の説で十分だと思ひますが、一言付け加へて置きます。大きな雷が凄まじい勢で鳴った。それにつゞいてしばらくの間四方でごろゝと鳴り渡ってゐる有様が南米の大きな天地を背景としてよく描き出されてゐる。南米の天地はかくもあらうかと思はれるほど雄大によく景色が出てゐる。その他のどの句も日本のこせゝした景色とは全然違った大きな所が見える。かういふ句を見せられると私達も南米へ行ってかゝる自然に接したいといふやうな気が頻りに起る。」秋櫻子「いよゝ行くか。」素十「行かんともかぎらんね。」虚子「秋櫻子君の言の如く、子雷とはよく言った。実際の景色は大きな雷がなって、それが四方の樹海に反響するのであるか、または大きな雷が頭上に鳴って、それから小さい雷が四方の樹海でごろゝと鳴るのであるか、どちらであるかはわからないが、然しいづれにしても子雷といふ言葉を捻出したのは念腹君の作句の技倆が著しく進歩したことを證明する。」
このむかごの句は早速「ホトトギス」の雑詠句評会(一三七回)にとり上げられた。担当評者は素十。素十は次のように評している。「―世界の田舎といふ言葉は勿論世界中の未開なところ、世界中で一番文化に遅れ遠ざかってをる所といふのであるが、「ブラジル」となると益々面白い。世界の田舎といふ言葉に対しても、又逆にブラジルといふ言葉に対してもこの位適切なつながりは外に見当らぬやうな気がする。―(中畧)こゝではいつかの句にあつたやうに稼ぎ餓鬼といふやうな日本特産の人達も住んでゐやうし、又、近頃は日本の田舎でも餘り食べさうにないむかご飯といふやうなものも時には食べるのであらう。成程世界の田舎に違ひない。(中畧)然しこの句は貧しい移民生活を送つてをる念腹の単なるセンチメントではない。又、単なる旨い句といふのでもない。之等の句に籠つてをる念腹の精神力といふものは全く凄まじいものであるといふものを見逃してはならない。念腹ははる〴ブラジルから、来年ホトトギス五百号祝賀会には何とかして列席して唱へたいと云つて来てをる。―念腹の境遇では或は実現せぬかも知れぬ。実現せんでもいゝ。ブラジルでも東京よりも盛大なのをやればいゝ。とに角私はかういふ念腹の旺んなる心意気を尊敬して衷心から君の健闘を祈る次第だ。」(「ホトトギス」四十巻十一号34-35頁 1938年8月)
後記+プロフィール713
後記 ◆ 村田 篠
大変だった一年も、残り少なくなりました。こんな年でも、年の瀬になにかと用事が多いのはいつも通りで、忙しいのは変わりません。なかなか先の見えない状況ではありますが、冷静に、落ち着いて、できることをしながら、来年も変わりなく日常生活を送っていきたいと思います。
●
さて今週号は、ブラジル移民の俳人・佐藤念腹の特集をお送りします。第688号、第689号で特集したアルゼンチン移民の俳人・崎原風子に続き、外地でつくられた俳句を読むという試みです。念腹以前のブラジルでつくられていた俳句から言及が始まり、いろんな方面からアプローチし、念腹100句抄の1句1句には選者の評も付されていて、大変分厚い特集になっています。ぜひお楽しみ下さい。
●
■外山一機 とやま・かずき
1983年生まれ。「鬣TATEGAMI」同人。力行会の書庫に出入りして以来、移民の俳句の世界に興味津々。
1992年生れ。「駒草」「むじな」。俳人協会会員、宮城県俳句協会幹事。
箱森裕美 天から手 10句
週刊俳句 第713号 2020年12月20日
【週俳11月の俳句を読む】見えない島を見る 柴田千晶
週刊俳句2020年アンソロジー 34名34句
週刊俳句2019年アンソロジー
34名34句
十二月八日のドアノブを回す 山本真也 第665号
もしかして冬うぐひすのにほひかも 細村星一郎 第668号
千の靴行き交ふ春の夕焼に 田口茉於 第669号
アスパラガス並べちゃんとした人になる 前田凪子 第670号
バレンタインの日に渡すはずだった。 森羽久衣 第671号
声ほどに嵩張るはなし鶴帰る 生駒大祐 第672号
花のころ日が差している製図台 藤田哲史 第672号
春昼は裏の畑に居マスとな 大野泰雄 第674号
棒読みで言はるる礼や雀の子 龍翔 第675号
片栗の花に屈むと踵浮く 黒岩徳将 第676号
暮春の母屋あぶらゑのぐの饐えてゐし 安里琉太 第679号
立ち眩みして水無月の青の中 安田中彦 第685号
三日ほど干しっぱなしの半ズボン 樋野菜々子 第685号
平泳ぎしながら時計さがしをり 千野千佳 第686号
湯にレンジに夕餉任せる油蟬 村上瑛 第690号
晩涼の杉木立より笛太鼓 太田うさぎ 第691号
蛸の追ふ生き身の蟹の速さかな 橋本直 第692号
向日葵や人撃つときは後ろから 堀田季何 第693号
破れたる靴の重さやすべりひゆ 佐藤友望 第694号
夢の汝は水棲にして秋の雨 中矢温 第696号
月涼し白ブラウスのもぎりさん 衛藤夏子 第697号
呼ぶほどに離れる猫よ花木槿 柏柳明子 第697号
なつかしき風を通せり西瓜の鬆 相馬京菜 第698号
ぽつりぽつり背中に話すカヌーかな 吉川わる 第699号
台風の夜の痩犬をかはいがる 淺津大雅 第701号
目薬の眼より零るる赤蜻蛉 郡司和斗 第702号
ぬすびとはぎいにしえびとの身軽さよ 桂凜火 第703号
短日は凪の兆も只ならず 田中泥炭 第704号
毬栗のたくさん当たる石仏 藤原暢子 第705号
知ることや愛することや朽葉微光 田中目八 第708号
橋に鳩マフラー貸してそれつきり 大塚凱 第709号
水運ぶ白足袋のかかとの丸み 鈴木春菜 第710号
手袋のままで証明写真撮る 藤田俊 第711号
煮凝りの中に眠たき王都かな 箱森裕美 第713号
(福田若之・謹撰)
後記+プロフィール714
後記 ◆ 岡田由季
本年、最終号の週刊俳句です。
昨年の最終号の表紙に、太陽の塔の後ろ姿の写真を使いました。
約一年後の12月、大阪モデルの新型コロナウイルス警戒レベルが赤信号となり、通天閣などとともに、この太陽の塔も赤くライトアップされました。今も赤信号は続いているのですが、なぜだか赤いライトアップはされていないようです。私はその状態を見ていないのですが、赤い太陽の塔は不気味だったろうと思います。
今年は、参加している吟行会がほぼ中止となり、私が吟行に行くことができたのは一回だけでした。その一回だけの吟行地も、たまたま、この太陽の塔のある万博記念公園でした。その時、太陽の塔の内部が見学できました。太陽の塔の内側は色彩にあふれていました。
2020年は、後になって何回も振り返ってみる年になったのではないでしょうか。私は、2020年のことを思い返すとき、太陽の塔も一緒に思い出しそうです。
●
■上田信治 うえだ・しんじ
1991年東京生まれ。「群青」、「オルガン」に参加。第1句集、『自生地』(東京四季出版、2017年)にて第6回与謝蕪村賞新人賞受賞。第2句集、『二つ折りにされた二枚の紙と二つの留め金からなる一冊の蝶』(私家版、2017年)。共著に『俳コレ』(邑書林、2011年)。
第五回 「円錐」新鋭作品賞・作品募集のお知らせ
〔今週号の表紙〕第714号 きんつば 西原天気
【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】トッド・ラングレン「グッド・バイブレーション」
(最終回まで、あと825夜)
(次回は西原天気の推薦曲)
2021年 新年詠 大募集
2021年 新年詠 大募集
新年詠を募集いたします。
●おひとりさま 一句 (多行形式ナシ)
●簡単なプロフィールを添えてください。
※プロフィールの表記・体裁は既存の「後記+プロフィール」に揃えていただけると幸いです。
●投句期間 2021年1月1日(金)0:00~1月8日(金) 12:00 正午
※年の明ける前に投句するのはナシで、お願いします。
〔投句先メールアドレスは、以下のページに〕
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2007/04/blog-post_6811.html
【2020年週俳のオススメ記事 10-12月】今年もありがとうございました 上田信治
今年もありがとうございました
上田信治
702号、田中裕明がのこした短章を丹念に拾遺する連載「空へゆく階段」。今回は、裕明がはじめて爽波に相まみえたころのスケッチ。
選句がはじまるとひどく恐い顔をなさったので気難しい人なのかしらと思った。考えてみればいまでも選句中の爽波先生は紙巻き煙草をさしたパイプを噛むようにくわえて、きまって眉間に皺をよせている。こんな難しい顔で選句をして終われば「今日はいい句が沢山あって気持ち良く選句することができました。」とおっしゃることもあるのでこちらはだまされたような気がする。対中いずみさんの解題には、掲載号の裕明作品が添えられる。
蓑虫や記憶のながれゆくところ 田中裕明
703号、「句集を読む」は、宮本佳世乃『三〇一号室』と今井聖『九月の明るい坂』をとりあげます。
「二階建てバスの二階にゐるおはやう」(…)この句には佳世乃句のすべてがある。ひかりに溢れているけど冷んやりしていて、呼びかけ(挨拶)がある。特定の誰かではなくみんなへの呼び掛け。(小林苑を「さみしいのかたち」)
「稲の中栞のやうに父立ちぬ」「捕虫網旗日の旗の前通る」追憶やら来し方やら、作者はみずからの(生きた)時間と(生きた)空間を、ドラマチックにとらえ、そのセンチメントが句をドラマチックにしている。俳句と〔私〕のあいだの距離を臆することなくつめる。(西原天気「まるで映画のように」)
「わたし生きてる春キャベツ嵩張る」キャベツの明るい色と嵩。芯は重いのに外側の葉の膨らみ具合は軽くてふかふか。嵩か。生命力なんていったら重過ぎるけど嵩なのか。句集『此処』の背景には身近な人々の死がある。されど此処で「わたし生きてる」。伝わるかな。 (小林苑を「かさばる」)
705号は(と「句集を読む」の紹介がつづくのですが)瀬戸正洋『亀の失踪』。
「粕汁や四人掛けの席に五人」だからなんなんのよ! であるが、わざとなんだから知らんぷりしたくもある。こんな句をつぎつぎ繰り出す瀬戸正洋の第六句集『亀の失踪』が届く。封を切るなり受取人である同居人は「平野甲賀じゃないか!」と叫んだ。(小林苑を「暮れそで暮れない黄昏時」)
706号の「空へゆく階段」は、「青」時代の、爽波から受ける選などについての追想。
俳句で師に学ぶというのは結局自分の自信のある作品と師の選がぴったりと重なるようにすることだと爽波先生が「青」に書かれていた(…)だから爽波選に入って嬉しいというのも、自分でどの句に自信があるのかもわからない頃のはなしで、しばらくすると選に入ってもただ嬉しいというのではなくなってくる。自分でもよくわからないような句が入選すると何故その句が良いのかが不思議で喜んでいられない。
707号は「2020角川俳句賞落選展」。一次予選通過作品7作品を含む20作品のご参加をいただきました。来年は、鑑賞記事を掲載させていただく予定です。
708号から、瀬戸正洋さんの「週俳10月の俳句を読む」を。
ホームセンターでパイプ椅子を買いました。軽くて持ち運びの便利なものです。夕暮れになると、それを担いで出掛けます。気に入ったところで、腰を下ろし辺りを見回します(…)数年前までは、この時間、赤ちょうちんの揺れる駅裏の路地をうろついていたことを考えますと雲泥の差です。もちろん、どちらが「雲」でどちらが「泥」なのかは、よくわかりません。調べないこと、考えないこと、これも「考察」であると思っています(…)
「蜩や誰も笑つてはいない」(田中泥炭)これが人間関係の真実です。笑っているように見えても、誰も笑ってなどいないのです。故に、他人を欺くのには「笑い」ほど便利なものはありません。蜩など好きなだけ鳴かせておけばいいのだと思います。
709号、髙鸞石さんが「落選展」の松尾和希さん(2013年生まれ、小学一年生)の作品の感想を書いて下さっています……と見せて、文末のリンクに、「落選展」についての評言が隠されている。どうしてそういう構成にされたのか。おそらく「グロ注意」ということなんでしょう。
710号、「中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜」は、ヤードバーズ「Train Kept A Rollin'」。日本語ロックの「レモンティ」の元ネタとして知られるこの曲、じつは、さらにいくつもの元ネタがあって、という話を紹介。
711号、 の「句集を読む」から、鴇田智哉『エレメンツ』評を。
句集をひとつの作品として編むのが当たり前になってきているのだろう。だから一句との出会いの悦びを味わうのとは違う。迷路に入り込むように頁を繰っていくことになる(…)句集全体を通して頻出しているように感じたのが団地と電柱なのだけれど、実際にはそんなに多いわけではない。現在と過去を二重写しにする存在として印象に残ったのだ。《うすばかげろう罅割れてゐる団地》《凍る地を踏みしだき団地をのぼる》《眩しくてこはい団地のハナミズキ》。これらの団地はときに賑やかで、ときに廃墟だ。(小林苑を「現在と過去を二重写しにする存在」)
712号、「週俳11月の俳句を読む」から。
(大塚凱「或る」10句について)これらの句は、作者が言い方を実に楽しんでいるのがよくわかる。言い方のためにできている句と言っても過言でない。実だとしても、虚と変らない。私はこれらの句を面白く読むが、十年後には作者自身がこういう狙いの見えた言い回しに飽きているのではないだろうか。(堀田季何「三者三様」)
「鯛焼や晴れただけでは見えない島」(大塚凱)島は、存在していないのかも知れません。晴れてさえすれば見えるというものでもありません。見るためには、自分自身が変ることが必要なのです。鯛焼は、鯛ではありません。口中でひろがる甘さが、見えない島を、よりいっそう見えなくしているのかも知れません。(瀬戸正洋「その月の感想」)
【2020年週俳のオススメ記事 7-9月】特別な夏 西原天気
特別な夏
【2020年週俳のオススメ記事 4-6月】春なのに 村田 篠
春なのに
村田 篠
〈天皇の白髪にこそ夏の月〉という宇多喜代子さんの句を論じた第682号の安田中彦さんの記事「天皇の白髪」も印象に残っています。いくつかのほかの方々の読みを紹介しながら、ご自分の読みを展開されていますが、「天皇」をどう読むかで鑑賞が大きく変わることを述べられています。一句をどう読むかはもちろん読者の自由ですが、この句はそこを迂回して読むことはできないし、「天皇」という言葉に対するスタンスを示すことなく鑑賞することはできない、という意味で、とても考えさせられる俳論でした。
そしてこの時期、西村麒麟さんの「僕の愛する俳人」シリーズが3月末から始まりました。「俳論と言うよりは、俳人や俳句そのものが主人公であるように鑑賞より紹介を目的に書き進めるつもりです。一句でも多く、その魅力を紹介出来れば幸いです」というスタンスで、読みやすく、親しみやすく書かれています。第675号から第678号まで4回連続で掲載されて、そこで中断していますが、ぜひ再開して欲しいと思います。
小誌の上田信治「2019 落選展を読む」もこの時期です(第676号、第678号、第679号、第684号)。信治さんはわけあって小誌のプラットフォームにログインできなくなり(詳細は、めでたく復帰が叶った第712号の「後記」をご覧下さい)、記事での登場も回数が減っていましたので、今年出会える貴重な記事になっています。
この期間に10句作品を寄せて下さったのは、第679号に安里琉太さん、第685号に安田中彦さん、樋野菜々子さん、第686号に千野千佳さんでした。アンソロジーでもご覧になれますが、10句作品として再度お楽しみいただければ、と思います。俳句作品は少なめでしたが、「句集を読む」はほぼ毎号掲載されています。
この3ヶ月は、ウイルス対策とはいえ、国全体が一斉に外出自粛を強いられるという大変な時期でした。この頃のようすを窺うのに案外参考になるのは「後記」を読むことではないかと思います。さらに年月を経ると、世の中はこんなふうだったのか、こんなことを考えていたのか、と振り返るのに、多少は役に立つものになるかもしれないと思います。改めて読み返してみると、信治さんの「後記」も読みたかったなあ、と少し残念ではありますが。
【2020年週俳のオススメ記事 1-3月】 振り返るのが怖い 岡田由季
【2020年週俳のオススメ記事 1-3月】
振り返るのが怖い
2020年の週刊俳句は第663号よりスタート。恒例の新年詠特集(143名参加)となりました。
年初の頃を振り返ると、たった一年弱前のことであるのに、世の中の状況が今とずいぶん違っていたように思えます。新年詠は2021年も募集いたしますが、常とは異なる一年を過ごした後、どのような作品が集まるのでしょうか。時代を反映したものになるのか、案外変わらないものなのか、興味深いです。
物故俳人は、結社などを持っていなかった場合、読み継がれることが難しいかもしれません。中尾寿美子の句集は現在入手が難しいかもしれませんが、文中に多くの句が引用されていますので、作品世界を知る手がかりになっていると思います。
第672号は生駒大祐さんと藤田哲史さんの第一句集W出版記念。『水界園丁』『楡の茂る頃とその前後』どちらも今年たいへん話題になった個性的な句集です。お二人の競詠と短文、「句集を読む」が掲載されています。
連載継続している「空へゆく階段」。第669号の№24 <書評 山の人生 前登志夫『吉野日記』>では、俳句の範囲を越え、文章というものへの裕明の対峙の仕方に触れることができます。
文章がたいへんな速度でものの本質にせまると言ってもよいがそれは文章自身がすぐれてリトリカルであるからにちがいない。
第668号 細村星一郎 もしかして 10句
第669号 田口茉於 横顔の耳 10句
第670号 ■前田凪子 新都心 10句
第671号 ■森羽久衣 風の日は 10句
第674号 ■大野泰雄 コロナ裏仮面 10句
第675号 ■龍翔 放し飼ひ
週刊俳句 第714号 2020年12月27日
後記+プロフィール715
後記 ◆ 上田信治
あけまして、おめでとうございます。
恒例の「新年詠」をお送りします。
小誌の「新年詠」は、ほんとうに年が明けてから、御投句いただくことになっているのですが、今年は、いきなり3日が日曜日なので、 来週もパート2をお送りいたします(御投句お待ちしております)。
>> 新年詠募集
●
今年もよろしくお願いいたします。
なかなか、お目にかかれない日々が続きますが、出来ますれば、いつか晴れた日にでも、そのへんでひょっくりお会いできるといいですね。
●
それではまた次の日曜日に(こちらで)お会いしましょう。
no.715/2021-1-3 profile
■大島雄作 おおしま・ゆうさく
1952年、香川県生まれ、大阪府豊中市在住。1982年「沖」に入会、能村登四郎、林翔に師事。2007年「沖」を退会し、季刊誌「青垣」を創刊、代表を務める。第9回俳句研究賞を受賞。句集に『鮎苗』『春風』『一滴』など。
■中内火星 なかうち・かせい
瓏玲、垂人、豆の木、現代俳句協会、ロマネコンティ、渋谷区シルバー人材センター(笑)に所属。
■熊谷尚 くまがい・たかし
1968年生まれ 秋田県秋田市 小学校教員 「香雨」同人
■マイマイ まいまい
1966年生まれ。句集に『翼竜系統樹』(2013)、『宇宙開闢(ビッグバン)以降』(2016)
■岡田一実 おかだ・かずみ 1976年生まれ。第3回芝不器男俳句新人賞にて城戸朱理奨励賞。第32回現代俳句新人賞。第11回小野市詩歌文学賞。「らん」同人。句集に『境界ーborderー』(2014)、『新装丁版 小鳥』(2015)、『記憶における沼とその他の在処』(2018)
■大井恒行 おおい・つねゆき
1948年、山口県生まれ。「豈」同人。句集に『風の銀漢』他。
■トオイダイスケ
1982年栃木県佐野市生れ。
■赤野四羽 あかの・よつば
1977年生まれ。句集「夜蟻」など。
■市川綿帽子 いちかわ・わたぼうし
1976年、神奈川県生まれ。「楽園」会員。俳人協会会員。市川恵子として詩も書いています。keiko-ichikawa-poetry.com
■KEN
屍派
■曾根毅 そね・つよし
「LOTUS」同人。現代俳句協会会員。句集『花修』(深夜叢書社)
■杉田菜穗 すぎた・なほ
1980年生まれ。「運河」無監査同人、俳人協会会員。句集に『夏帽子』『砂の輝き』。
■宇井十間 うい・とげん
■木野俊子 きの・しゅんし
2005年から、俳句人。「樹氷」
■中山奈々 なかやま・なな
1986年大阪生まれ。「百鳥」同人、「淡竹」「奎」所属。ドライヤーがあってはじめて効果を発揮するシャンプーを使っているが、我が家にはドライヤーがない。
■竹岡一郎 たけおか・いちろう
昭和38年生れ。鷹月光集同人。
■九堂夜想 くどう・やそう
1970年生まれ。「LOTUS」編集人。句集『アラベスク』(六花書林、2019年)。
■飯田冬眞 いいだ・とうま
1966年札幌市生まれ。「豈」同人、「未来図」後継誌「磁石」編集長。俳人協会会員。句集『時効』(ふらんす堂)
■篠崎央子 しのざき・ひさこ 1975年生れ。「磁石」(「未来図」後継誌)編集員。共著『超新撰21』(2010年)。第1句集『火の貌』(2020年)。
■杉原祐之 すぎはら・ゆうし
昭和五十四年東京都生まれ。「山茶花」飛天集同人、「夏潮」運営委員。第12回「黒潮賞」を受賞。句集『先つぽへ』。
■及川真梨子 おいかわ・まりこ
1990年、岩手県生まれ。「小熊座」同人。「むじな」メンバー。
■笠井亞子 かさい・あこ
「麦の会」会員。「塵風」同人。現代俳句協会会員。西原天気と『はがきハイク』を不定期刊行。
■竹内宗一郎 たけうち・そういちろう
1959年鳥取県生まれ。「天為」同人。「街」同人・編集長。俳人協会会員。
■芳野ヒロユキ よしの・ひろゆき
1964年生まれ。静岡県磐田市在住。「猫街」同人。句集に『ペンギンと桜』(2016年・南方社)。
■小西瞬夏 こにし・しゅんか
1962年生まれ。岡山県在住。「海原」同人。現代俳句協会会員。句集『めくる』『一対』合同句集『はるのさかな』。
■桂凜火 かつら・りんか
2008年「海程」入会。2015年 第50回「海程」新人賞受賞。2018年「海程」終刊。現在「海程」後続誌「海原」同人。現代俳句協会会員。2020年9月 句集「瑠璃蜥蜴」ふらんす堂より出版。
■ハードエッジ 内国産、twitter専業俳人:https://twitter.com/hard_edge 葉書俳句量産:bit.ly/331Byqc オマケ句:輪の中に獅子の咆哮初映画
■中村想吉 なかむら・そうきち 1959年、埼玉県生まれ。2017年より俳句をはじめる。「蒼海俳句会」会員。
■上野葉月 うえの・はつき
暫定句会、豆の木、尻子玉句会。ブログ「葉月のスキズキ」https://93825277.at.webry.info/
■矢作十志夫 やはぎ・としお
1948年生まれ 「あだち野」代表
■鈴木茂雄 すずき・しげお
1950年大阪生まれ。堺市在住。「きっこのハイヒール」「KoteKote-句-Love」所属。 ☆Blog 「ハイク・カプセル」https://twilog.org/haiku_capsule
■瀬戸正洋 せと・せいよう
■竹井紫乙 たけい・しおと
1970年生。句集『菫橋』『白百合亭日常』『ひよこ』
■西生ゆかり さいしょう・ゆかり
2016年、街未来区賞。2019年、第3回円錐新鋭作品賞白桃賞。同年、第3回新鋭俳句賞(俳人協会主催)準賞。
■河本かおり かわもと・かおり
1963年大阪府生まれ。「奎」同人。いつき組。
■柏柳明子 かしわやなぎ・あきこ
1972年生まれ。「炎環」同人。「豆の木」所属。第30回現代俳句新人賞。句集『柔き棘』(紅書房、2020)
■山田すずめ やまだ・すずめ
大阪生まれ。「青垣」所属。文芸同人「カム」所属。
■遠藤由樹子 えんどう・ゆきこ
1957年生れ。未来図を退会後、現在無所属。第61回角川俳句賞受賞。句集に『濾過』。
■山中西放 やまなか・せいほう
現:俳句人・大山崎むつみ・HP:きつねのしっぽ俳句あい・元渦・句集二集 京都生。
■五十嵐秀彦 いがらし・ひでひこ
1956年生れ。札幌市在住。現代俳句協会理事、俳人協会会員、「藍生」会員、「雪華」同人。俳句集団【itak】代表。第23回(2003年度)現代俳句評論賞。
■宮﨑莉々香 みやざき・りりか
1996年高知県生まれ。地味に俳句を続けています。
■広渡敬雄 ひろわたり・たかお
1951年福岡県生まれ、「沖」蒼茫集同人、「塔の会」幹事、俳人協会会員。句集『遠賀川』『ライカ』(ふらんす堂)『間取図』(角川書店)。『脚注名句シリーズⅡ・5能村登四郎集』(共著)。2012年角川俳句賞受賞。2017年千葉県俳句大賞準賞。2017年7月より、「俳壇」にて「日本の樹木」連載中。
■うにがわえりも
1995年生まれ。東北若手俳人集『むじな』に参加。歌人としては、「かばん」「塔」に所属。2016年「好きな女の子ができて」(30句)第13回鬼貫青春俳句大賞。
■山口昭男 やまぐち・あきお
昭和30年(1955年)4月22日・兵庫県生まれ 波多野爽波、田中裕明に師事 「秋草」創刊主宰 句集『書信』『讀本』『木簡』 第六十九回読売文学賞受賞
■琳譜
無所属
■髙木小都 たかぎ・こと
蒼海俳句会
■クズウジュンイチ
■小田島渚 おだしま・なぎさ
銀漢、小熊座所属、仙臺俳句会(超結社句会)運営、第44回宮城県俳句賞
■小川楓子 おがわ・ふうこ
1983年、神奈川県生まれ。「舞」所属。共著に『超新撰21』『俳コレ』『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』ほか。
■矢野玲奈 やの・れいな
1975年生まれ。「玉藻」「天為」同人、「松の花」会員。句集『森を離れて』
■松尾和希 まつお・かずき
2013年生まれ。神奈川県出身。無所属。句歴3年。小学一年生。
■齋藤朝比古 さいとう・あさひこ
1965年東京生れ。1993年より石寒太に師事。「炎環」同人。「豆の木」副代表。第21回(2006年度)俳句研究賞。
■瀬名杏香 せな・きょうか
1997年北海道生まれ。「椋」会員、石田郷子に師事。
■森羽久衣 もり・はくい
1967年石川県生まれ。「銀漢」同人。
■対中いずみ たいなか・いずみ
1956年生まれ。田中裕明に師事。第20回俳句研究賞受賞。句集に『冬菫』『巣箱』『水瓶』(第68回滋賀文学祭文芸出版賞、第7回星野立子賞)『シリーズ自句自解Ⅱベスト100対中いずみ』。「静かな場所」代表、「秋草」会員。
■廣島佑亮 ひろしま・ゆうすけ
1967年生まれ。岸本尚毅に師事。「あるまだⅡ」代表、「We」同人。東海地区現代俳句協会青年部長。
■小林かんな こばやし・かんな
1990年より『天街』国武十六夜・野間口千賀に師事。2018年より『ユプシロン』に参加。現代俳句協会会員。
■高橋透水 たかはし・とうすい
1947年新潟生。東京都中野区在住。定年を機に本格的に俳句を学ぶ。現代俳句協会会員。
■野口 裕 のぐち・ゆたか
1952年生まれ。京阪神のあちこちの句会に出没していたのがコロナ以前。コロナ以降、京阪神はばらばら。少なくとも神戸在住の愚生にとって、淀川より東はとんと無縁になった。句集「のほほんと」。希望有れば、お送りします。アドレス yutakanoguti@mail.goo.ne.jp まで。
■鈴木牛後 すずき・ぎゅうご
1961年北海道生まれ、北海道在住。俳句集団【itak】「藍生」「雪華」所属。
■堀田季何 ほった・きか
「楽園」主宰
■岡村知昭 かむら・ともあき 1973年滋賀県生まれ。「豈」「狼」「蛮」所属。句集『然るべく』(草原詩社)、共著『俳コレ』(邑書林)。
■三島ゆかり みしま・ゆかり
不定期刊連句誌『みしみし』編集人。
■小池康生 こいけ・やすお
1956生まれ。大阪在住。 「奎」代表。「銀化」同人。句集「旧の渚」「奎星」
■柳本々々 やぎもと・もともと
第57回現代詩手帖賞。句集に『バームクーヘンでわたしは眠った』
■なむ烏鷺坊 なむ・うろぼう
月天・塵風・百句会所属。
■高梨章 たかなし・あきら
1947生 仮名句会参加
■Fよしと えふよしと
札幌生まれ、2010年から俳句を始める雪華、イタック、中北海道現代俳句協会所属"
■西川火尖 にしかわ・かせん
「炎環」「Qai」に所属。「子連れ句会」問合せ先。第11回北斗賞。第一句集出版準備中。
■津髙里永子 つだか・りえこ
「小熊座」同人
■玉田憲子 たまだ・のりこ
1948年秋田県生まれ。群馬県在住。「街」同人。句集『chalaza』(カラザ)。
■細村星一郎 ほそむら・せいいちろう
2000年生。「奎」同人、「慶應俳句会」代表。
■雪我狂流 ゆきが・ふる
1948年生まれ
■箱森裕美 はこもり・ひろみ
栃木市生まれ。「炎環」、「紫」、詩歌句同人Qai〈クヮイ〉所属。
■小野裕三 おの・ゆうぞう
「海原」「豆の木」所属。
■川合大祐 かわい・だいすけ
1974年長野県生まれ。川柳作家。句集『スロー・リバー』。
■紀本直美 きもと・なおみ
句集『さくさくさくらミルフィーユ』『八月の終電』(創風社出版)。紀本直美の俳句ブログ。Twitter:@kimotonaomi
■藤崎幸恵 ふじさき・さちえ
神戸市生れ。「街」同人。
■青木ともじ あおき・ともじ
1994年生。「群青」所属。
■石原ユキオ いしはら・ゆきお
王谷晶『ババヤガの夜』に痺れてぶっ倒れたまま寝正月をキメています。ブログ「石原ユキオ商店」 https://d-mc.ne.jp/blog/575/ ツイッター https://twitter.com/yukioi/
■荻原裕幸 おぎはら・ひろゆき
1962年名古屋市生れ。名古屋市在住。歌人。東桜歌会主宰。同人誌「短歌ホリック」発行人。第六歌集『リリカル・アンドロイド』(2020年書肆侃侃房)他。
■村上鞆彦 むらかみ・ともひこ
1979年、大分県宇佐市生まれ。「南風」主宰。句集『遅日の岸』。
■堀本裕樹 ほりもと・ゆうき
「蒼海」主宰
■吉川わる きっかわ・わる
1965年生まれ。都市同人。
■谷村行海 たにむら・ゆきみ
1995年生まれ。俳人協会会員。「街」「むじな」所属。2019年、第5回詩歌トライアスロン次点。2020年、街未来区賞受賞。
■月波与生 つきなみよじょう
1961年生まれ 『川柳の話』発行人
■佐藤りえ さとう・りえ
1973年生まれ。「豈」同人。句集『景色』、歌集『フラジャイル』。
■倉田有希 くらた・ゆうき
1963年生。「里」を経て現在は「鏡」同人、「写真とコトノハ展」代表。
■野間幸恵 のま・ゆきえ
1951年大阪生まれ。柏原市在住。「TARÔ冠者」所属、「PICNIC」発行。
■菅原はなめ すがわら・はなめ
1999年生まれ。「小熊座」所属。宮城県仙台市在住。
■田口茉於 たぐち・まお
1973年生まれ。「若竹」同人、「風のサロン」会員。
■隠岐灌木 おき・かんぼく
1948年生まれ。大阪在住。「きっこのハイヒールひよこ組所属」。
■楠本奇蹄 くすもと・きてい
2017年より「暫定句会」「豆の木」参加。
■山岸由佳 やまぎし・ゆか
1977年生まれ。「炎環」「豆の木」。第33回現代俳句新人賞。
■衛藤夏子 えとう・なつこ
1965年生まれ、「船団」散在後、無所属。2017年「蜜柑の恋」(創風社出版)上梓。「坪内稔典100句」(創風社出版)、「朝ごはんと俳句365日」(人文書院)、「俳句の杜2019」(本阿弥書店)などに参加。
■略箪笥 りゃく・たんす
1996年生まれ。京都在住。
■生駒大祐 いこま・だいすけ
1987年三重生まれ。無所属。イベントユニット「真空社」社員。受賞に第3回攝津幸彦記念賞、第5回芝不器男俳句新人賞、第11回田中裕明賞(『水界園丁』にて)等。句集に『水界園丁』(港の人, 2019)。
■いなだ豆乃助 いなだ・まめのすけ
1976年大阪生まれ。「短歌人」及び「川柳 北田辺」会員。
■井上雪子 いのうえ・ゆきこ
1957年、横浜市生まれ。2008年~2014年「山河」に所属、2012年~2016年「豆句集 みつまめ」に参加。
■久留島元
■横井来季 よこい・らいき
2001年、愛知県生まれ。2017年より俳句を始める。「楽園」会員。「奎」同人。関西俳句会「ふらここ」所属。現代俳句協会会員。
■犬星星人 いぬぼし・せいじん
1987年生まれ。蒼海俳句会所属。
■野口る理 のぐち・るり
1986年生まれ。共著に『俳コレ』、『子規に学ぶ俳句365日』。句集に『しやりり』 (2013年12月)。
■中嶋憲武 なかじま・のりたけ
「炎環」「豆の木」所属。第0句集「祝日たちのために」
■福田若之 ふくだ・わかゆき
1991年東京生まれ。「群青」、「オルガン」に参加。第1句集、『自生地』(東京四季出版、2017年)にて第6回与謝蕪村賞新人賞受賞。第2句集、『二つ折りにされた二枚の紙と二つの留め金からなる一冊の蝶』(私家版、2017年)。
■小野富美子 おの・ふみこ
76歳。麦同人。
■浅川芳直 あさかわ・よしなお
平成四年生まれ。「駒草」「むじな」。第8回俳句四季新人賞。
■村田 篠 むらた・しの
1958年、兵庫県生まれ。2002年、俳句を始める。現在「月天」「塵風」同人、「百句会」会員。共著『子規に学ぶ俳句365日』(2011)。ブログ「Belle Epoque」
■青島玄武
〔今週号の表紙〕第715号 ミサゴ 岡田由季
〔今週号の表紙〕
第715号 ミサゴ
週刊俳句 第715号 2021年1月3日
第715号
2021年1月3日
■2021年「週刊俳句」新年詠 (1)■
(クリックすると大きくなります)
二〇二一年新年詠(1) (到着順)
年寄りの駆け出しとして年迎ふ 大島雄作
コロナ不要 不急の地球手毬つく 中内火星
初旅やあけぼのの富士むらさきに 熊谷尚
救護所の鏡に映る初景色 谷口智行
牛柄の余白に謹賀新年と マイマイ
去年今年思ひながらに思ひ古る 岡田一実
杖上げて牛後の天にたたく音 大井恒行
malsaĝuloj のひとりの我を淑気は襲う トオイダイスケ
さいたさいた初鶯のあやまてり 赤野四羽
おほぞらや地球のいろは冬の青 市川綿帽子
星近し声をひそめて姫始 KAZU
コスプレの娘に草石蚕ひとつずつ 曾根毅
願ふこと祈ることあり去年今年 杉田菜穗
鷹赦されずして 罰とは名づけえぬもの 宇井十間
鯛焼や彼にも彼女にも未来 木野俊子
予選Bブロック嫁が君の推し 中山奈々
初茜地祇と英霊まづ照らす 竹岡一郎
太陽を舐め黒牛の大金糞 九堂夜想
牛の音のやさしきうねり初山河 飯田冬眞
あらたまの黒き牛より光り出す 篠崎央子
後輩の結婚を知る賀状かな 杉原祐之
初日出みな軽やかな風である 及川真梨子
おなますの人参分布よく晴れて 笠井亞子
ぐにやぐにやのなまはげが来る最後の家 竹内宗一郎
カニカマと水で凌いで新年も 芳野ヒロユキ
ダイヤモンドダストいけない子どもだつた 小西瞬夏
幸福の硬貨をもらう春初め 桂凛火
きらきらとフレア空飛ぶ宝船 ハードエッジ
歌舞伎めく指差呼称して初仕事 中村想吉
回文状の春ドローンの包囲 上野葉月
太箸や家族ごつこのはじまりぬ 矢作十志夫
こだましてコロナの裂目より初日 鈴木茂雄
門松や歩けば転ぶそれでも歩く 瀬戸正洋
隅から隅まで花びら餅包む 竹井紫乙
人間を連れて犬来るお正月 西生ゆかり
初春や夫の珈琲いと甘し 河本かおり
二日はや天辺ひらくオムライス 柏柳明子
初風呂の蛇口にびよんと吾の顔 山田すずめ
初明り古き洋画に舟を漕ぎ 遠藤由樹子
初詣ネアンデルタール人の陰少し 山中西放
影踏めば逃げゆく人の春著かな 五十嵐秀彦
犬吠えてゐて門松や隣んち 宮﨑莉々香
蓮根の穴も食うたと初笑ひ 広渡敬雄
淑気満つあかちゃんのはくミキハウス うにがわえりも
綱曳や湖の魚を甘く煮て 山口昭男
蘇民将来子孫家家門明の春 琳譜
白粉に目張り頬紅花小袖 髙木小都
無限初鳩松が枝を撓めしむ クズウジュンイチ
風に翼 未解読文字は水の底 小田島渚
スワン菊名の錆びた感じに初あかり 小川楓子
膝元の歌留多とられてしまひけり 矢野玲奈
正月のおいしいごはんたべたいな 松尾和希
年玉の袋に鍵を渡されし 齋藤朝比古
猫の鼻柱につきぬ年始め 瀬名杏香
良縁をもう願わない初詣 森羽久衣
蒲団出ず声聞くのみに初雀 小川軽舟
波ぶつかる波の飛沫や大旦 対中いずみ
去年今年街に漂ひたる怒り 廣島佑亮
コーヒーに垂らす蜂蜜獅子頭 小林かんな
注連飾る性のシンボル付け替えて 髙橋透水
元日のルーティンロールケーキ切る 野口裕
我佇ちぬ初山河の出つぱりとして 鈴木牛後
初火事のあなたあなたの投票機 堀田季何
御降のこと天麩羅のこと告げり 岡村知昭
去年今年傾がせ東京タワー屹つ 三島ゆかり
初東雲タオルに深く顔沈め 小池康生
そこからでもいちがつのつきみえるのか 柳本々々
曖昧と模糊と仔猫の去年今年 なむ烏鷺坊
この水もあの水にゆく初明かり 高梨章
初詣未来が少し有ればいい Fよしと
初夢の鶏に蔓延する人語 西川火尖
酔ひ醒めにクラクラ日記読始 津髙里永子
真珠色の月の残れる大旦 玉田憲子
飴玉を駒に使つて絵双六 細村星一郎
左手は右手で洗うお正月 雪我狂流
新年のみづ遣る果樹に雑草に 箱森裕美
棒読みのような書き初め飾るかな 小野裕三
賢人と牛のかたちに切る時計 川合大祐
荒波を人魚になって去年今年 紀本直美
一枚目はいつも富士山初暦 藤崎幸恵
初詣ついでの猫を拝みけり 青木ともじ
読初めの指が四、五本とぶ話 石原ユキオ
亡父から賀状(料金不足)来る 荻原裕幸
正月の凧ひとつ鳴る渚かな 村上鞆彦
榧の木の五百歳なる淑気かな 堀本裕樹
足白き猫の鈴の音大旦 吉川わる
伊勢海老のくつたり逃げ恥最終回 谷村行海
愛欲に(自称)があって栗きんとん 月波与生
空押しの凹みめでたく読み初む 佐藤りえ
一身の肉を忘るる初湯かな 倉田有希
暗がりへやさしい牛の舌のこと 野間幸恵
口内に太き腕あり獅子頭 菅原はなめ
稜線にしまはれてゆく御元日 田口茉於
うずくまる心をほぐす初明り 隠岐灌木
淑気満つアンパンマンを焼くけむり 楠本奇蹄
みづおとの氷の向こう城の跡 山岸由佳
初晴れて夜勤明けての研修医 衛藤夏子
剃ってない眉間痒がらせる初日 略箪笥
双六の世にひらかなの降りにけり 生駒大祐
数の子の恨み恐ろし熱帯夜 いなだ豆乃助
去年今年たたかふひとの白き服 井上雪子
雑煮餅数年会っていない人 久留島元
火傷しつつ蜘蛛の糸啜るや初夢 横井来季
寛やかに寛やかに初日の出かな 犬星星人
初夢いまだに日々こんなにも日々 野口る理
肩幅のあり元日の夜の雲 中嶋憲武
天球に無数の航路宝船 福田若之
お煮染めに火を入れ直す二日かな 小野富美子
去年の雪ざつとこぼして神樹あり 浅川芳直
東京の空美しき初電車 内田創太
初明りしてクレーンの影静か 村田篠
舞初や大きな腹が立ち上がる 青島玄武