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【八田木枯の一句】更衣すめらみくには水に浮き 太田うさぎ

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【八田木枯の一句】
更衣すめらみくには水に浮き

太田うさぎ


更衣すめらみくには水に浮き  八田木枯

『夜さり』(2004年)より。

温暖化のせいとばかりは限らないけれど、早ければ4月半ば、たいていはゴールデンウィークの頃には夏服デビューしている。それでも、衣替えといえばやっぱり6月。半袖の腕や開いた襟ぐりに梅雨入り前のさらさらした空気が心地良い。新涼とは違う、この時期ならではの皮膚感覚がある。毎年巡って来る季節なのに新鮮でいてどこか懐かしくて。そんな感じをこの句とは分かち合える気がするのだ。

「すめらみくに」は漢字で書けば「皇御国」。この言葉を剣呑と見る向きもあるかもしれない。しかしながら、平仮名による表記はやわらかく涼しげで、続く「水に浮き」へと美しい流れを作っているのは確かだ。そして海ではなく水とすることで全体に清らかな印象が生まれている。

水に浮くと言えば流され易さや浮薄さを連想しなくもなく、それがこの国のあり様を示唆している(であるからして「すめらみくに」は意図的な使用)なんて解釈をする人もいるかしらん? ふとそんな疑問が頭をよぎったけれど、やはりこの措辞は、夏服の清涼感にぴったりだと素直に受け止めたい、どこか一抹の儚さを感じつつ。




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