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【八田木枯の一句】小春日のこゑはむかしの屑や屑 太田うさぎ

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【八田木枯の一句】
小春日のこゑはむかしの屑や屑

太田うさぎ


第4句集『天袋』(1998年)より。

小春日のこゑはむかしの屑や屑   八田木枯

屑屋、ではなく屑屋さん、と口をついて出るからにはこの生業、私の幼い時分には身近なものだったのかもしれない。それともちり紙交換車のことを親に倣ってそう呼んでいたのかしらん。

模糊とした記憶を繙けば「屑ぅ〜い、おはらい」の呼び声も耳に蘇ってくる気さえするけれど、本当に聞いたのだかどうだか。

屑屋さんが「屑や屑」と町なかを回っていたとはあまり思えず、この台詞ならどうしたって「しづやしづしづのをだまき繰り返し昔を今になすよしもがない」を連想する。

玉のような小春日和、なんとなく懐古の情を辿るうちにどういうわけか屑屋が静御前を呼び出してしまったようでおかしい。

軽く肩を揺すって笑ってみせる木枯さんの姿が目に浮かぶのでした。



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