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『関西俳句なう』につっこむ 1 佐藤文香

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【俳句関連書を読む】
『関西俳句なう』につっこむ

佐藤文香



『関西俳句なう』という、関西の若手の俳句が載ってる本が出たと聞いたので購入することにした。

まず「東京がなんぼのもんじゃ」というコピーが、フォント違いでクロスした二重の虹のように書かれているのにぎょっとする。

(どうでもいいが、もんじゃは月島名物である)



(ポップ体の「じゃ」は背表紙にかかっており、「若手26人」の下に現れる)

が。
とりあえず、買った。

買った理由は、ぱらっとめくった黒岩徳将の近影がかわいかったからだ。
何か食っている。


(その上の加納綾子は、プリクラか? ふたりの写真のギャップが凄い。)

ともかく近影があるのは、チョシャキンフェチ(著者近影フェチ)としては嬉しいので、買った。



もともと一応兵庫県神戸市出身のわたしとしては(11歳まで)、関西にまた住みたいという気持ちもあるし、26人のうちわりと深い付き合いがある人もいる。

と、ラインナップをよく見て、驚いた。



中山奈々がいない。

中山奈々は1986年生まれ、「里」「百鳥」所属である。

いくたびもまぶたの落ちる雪景色   中山奈々
ざらつきて舌の悴むこと知らず
ああ春はまだ暗がりに置くピアノ
雪道はどんと一本牛の匂ふ
かかとより入れば重たき雪の声

以上は「里」2月号特集「2015寒稽古in軽井沢入選全句」より。

わたしと所属誌が同じなので身内贔屓に見えるかもしれないが、知る限りの関西の若い子のなかでは、中山が面白いと常々思っていたので、中山の不在に落胆した。中山奈々50句は、なんならわたしがつくる。それにしても、中山より面白いやつが本当にわんさかいるのか?

その代わり、岡田一実が入っていることに喜ぶ。岡田は愛媛県松山市在住である。

関西俳句じゃなかったのか。

西日本はすべて関西なのか。

(時間だけでいえば、新大阪から松山は、電車だと接続がよくても4時間かかる。新大阪から岡山までが50分、岡山から松山までが2時間50分。一方、東京と新大阪は2時間半。それでも、愛媛を関西に入れなあかん事情があるんでしょう。)

『関西俳句なう』というタイトルを見ると「関西の俳句の現在」の本のように見えるが、というよりは、帯からもわかるように、「東京のおまえらに見えてない俳句の現在を世間に知らしめる!」という意図があるのだろう。

(君らの言う、東京の人らって誰やねん。)
(たぶん、あれやな、俳壇とかいわれるヤツやな。)

ここまできて、ようやく、関西俳句なう代表の塩見恵介の「はじめに」を読むと、

総合誌の話題はどうしても首都圏が中心となっており、関西に住む我々にとっては少し残念な思いをすることの多い日々が続きました。(中略)
それならば関西(西日本)の同世代的な俳句を我々で発掘、紹介していこうという企画で一年間サイトを運営しました。

なるほど。話題にされたいわけだな。というわけで、今、話題にしています。

そしてそのサイトは「俳句グループ「船団」の関西在住若手メンバー六人で立ち上げ」た、とあるのだが。

またしても驚いた。

本書は、二〇一二年現在、「船団」に所属している若手作家十三人と、他結社・個人の作家十三人の書簡交換形式による作品五十句の発表の場としました。
また、「船団」の先輩諸俳人から、若手俳句のキーワードを種にミニエッセイを寄稿していただきました。

関西の若手っていっても、半分は船団なのか?
若手じゃない船団の人のエッセイは掲載される必要はあるのか?

これは、『船団俳句なう』じゃないのか。
(帯写真をもう一度ご覧ください。上段が「船団」、下段がそれ以外です)

船団以外の13人の所属を見てみると、なんと5人がいつき組だ(黒岩、山澤、岡田、羽田、森川。羽田は「百鳥」にも所属)。若狭・手嶋も俳句甲子園出身で、立場的にもいつき組と近いところにいる(いた)と言えるので、半分近くがいつき組界隈ということになる。また、半分ほどが現在関西に住んでいないことも確認できる(手嶋に至っては関東在住)。

これも、もうちょっとなんとかできたのではないか。
友達に頼んだだけじゃないか、と不安になる。
(多彩な作品に期待する。)

また、鬼貫青春俳句大賞受賞者が、プロフィールでわかる範囲で船団側に6人いる(加納、二木、山本、藤田、久留島、中谷)。このへんも気になるところだ。(それなら鬼貫青春俳句大賞じゃなくて、船団新人賞でいいんじゃないか?)


別に、偏っていても、船団の本でも、いいのである。アンソロジーを出すといったときに、編者の意図で偏ることはあるだろうし、ある集団が自分たちの本を出したいことだってある。


しかし、仮にも、『関西俳句なう』というタイトルなのだから、俳句を愛する人間としては、関西の今の俳句シーンの一番素敵なところを汲み上げているだろうと期待して読みはじめるつもりだし、今俳句に興味を持ち始めた関西ラブな人が手にとったとき、「びっくりして嬉しくなる(by池田澄子(船団))」かどうかを本気で確かめたい。


補足
ちなみに、年齢でいうと、最年少が1990年生まれ(今年25歳)の黒岩徳将、最年長が1969年生まれ(今年46歳)の朝倉晴美。
船団側は20代が4人、30代が6人、40代が3人。それ以外側は20代が3人、30代が6人、40人が4人と、年齢に関しての偏りは少ない。20代が全体で7人入るのは、わりと多い印象。

*「週刊俳句」読者の方へ、参考までに、今年25歳が村越敦、今年30歳が山口優夢(佐藤も)、今年46歳が関悦史である。


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