【週俳5月の俳句を読む】
星が咲く朝
川又 夕
早熟の果てがこの余韻なのだと、ベッドに溺れながら思いを馳せている。
戒めの縄目あらはに桜の夜 菊田一平
無理な体勢をしなやかに受け容れた時、驚きながら悦ばれるのが嬉しい。
ひとの躯が縛られるように。樹齢を重ねた木の幹には肉感がある。
満ち干きの潮に戦げり石ぼたん
海がよく見える道で、私を助手席に乗せて手を握るひとのことを考えていた。
そよそよと、絡み付いてはくれない触手の蠢きにもどかしい思いをする。
●
蝸牛行方をさぐる角を立て 金中かりん
弱みを探り当てるために尖らせた舌は、罪深い。
掠めるように這い回る意地悪。だから触角のように反応してしまう。
軒忍夫の遺せし匙磨く
切ない想いに共鳴するのは、いつかの自分だからかも知れない。
輪郭をなぞる行為は過去を余りにも濃い光にする。
●
わかったふりで暗喩のような木耳食う 金原まさ子
ゆっくりと咀嚼する姿は官能的。
眼を閉じている姿は尚更であることを、未だ知らないひとがいる。
セロリスティックの軽さで春の気狂れかな
軽くても、確かなかたちのあるセロリスティック。春に気が狂れるのは決まっていたことのように思えてくる。
男のひともセロリスティックのようになれば良い。
息をするように俳句と生きて十年。
心よりも先に躯が欲深くなる朝を重ね、肌に触れるようにまた俳句が詠みたくなる。
第316号2013年5月12日
■菊田一平 象 10句 ≫読む
第317号2013年5月19日
■金中かりん 限定本 10句 ≫読む
第318号2013年5月26日
■金原まさ子 セロリスティック 10句 ≫読む
●
星が咲く朝
川又 夕
早熟の果てがこの余韻なのだと、ベッドに溺れながら思いを馳せている。
戒めの縄目あらはに桜の夜 菊田一平
無理な体勢をしなやかに受け容れた時、驚きながら悦ばれるのが嬉しい。
ひとの躯が縛られるように。樹齢を重ねた木の幹には肉感がある。
満ち干きの潮に戦げり石ぼたん
海がよく見える道で、私を助手席に乗せて手を握るひとのことを考えていた。
そよそよと、絡み付いてはくれない触手の蠢きにもどかしい思いをする。
●
蝸牛行方をさぐる角を立て 金中かりん
弱みを探り当てるために尖らせた舌は、罪深い。
掠めるように這い回る意地悪。だから触角のように反応してしまう。
軒忍夫の遺せし匙磨く
切ない想いに共鳴するのは、いつかの自分だからかも知れない。
輪郭をなぞる行為は過去を余りにも濃い光にする。
●
わかったふりで暗喩のような木耳食う 金原まさ子
ゆっくりと咀嚼する姿は官能的。
眼を閉じている姿は尚更であることを、未だ知らないひとがいる。
セロリスティックの軽さで春の気狂れかな
軽くても、確かなかたちのあるセロリスティック。春に気が狂れるのは決まっていたことのように思えてくる。
男のひともセロリスティックのようになれば良い。
息をするように俳句と生きて十年。
心よりも先に躯が欲深くなる朝を重ね、肌に触れるようにまた俳句が詠みたくなる。
第316号2013年5月12日
■菊田一平 象 10句 ≫読む
第317号2013年5月19日
■金中かりん 限定本 10句 ≫読む
第318号2013年5月26日
■金原まさ子 セロリスティック 10句 ≫読む
●