〔今週号の表紙〕第802号 地下街
西原天気
手品師の指いきいきと地下の街 西東三鬼
この句が書かれた1936年から80年以上が経過して、私たちの中の地下街のイメージはずいぶんと変化したのでしょう。
西原天気
けれども、やがて、地下街はそれほど都会的な存在ではなくなって、言い換えれば、都市のもつある種の先端性をまとわなくなって、ちょっと古ぼけて懐かしいような色合いを帯び始めました。
手品師の指いきいきと地下の街 西東三鬼
と、一度は思ってみてから、待てよ、この手品師の、スマートで洗練された挙措の裏に隠されたなんだか胡散臭く蠱惑的な雰囲気は、むしろ今の地下街のほうが似合うのではないか、とも思い始めました。
地下というトポスは、都市計画の白くきれいな図面とは別に、黒く蠢く不明のものを、もとより内蔵しているのかもしれません。