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2017落選展を読む 11. 「ハードエッジ 豚カツ」 上田信治

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2017落選展を読む 
11.「ハードエッジ 豚カツ

上田信治

ハードエッジ 「豚カツ ≫読む 

この50句には、いま俳句いっぱんに流通している基準から、わりと自由に書かれている感触があって、賞応募作といえども、俳句が採点競技のようであったらつまらないので、その自由さは、まず好ましい。

大いなるシーツが飛んで花吹雪
花ふぶき張子の虎も吠ゆるかな


発想は「月並」ふうだけれど、イラスト的にイメージを構成したり。

客布団黴を寄せじと絢爛に
水族館に海の一族注連飾


なにかそれこそ「絢爛」たるものを見せようという。

噛み抱くは子猫の時のタオルなり

「噛み抱くは」という言い方の粘っこさが、猫のあそびのしつっこさに通じて、言葉に質感がある(この句については、季語がないことより、「の時の」が示す内容のあいまいさが気になる)。

南瓜煮て一晩寝かす手紙かな
干布団枯野の見ゆる丘の上


「手紙」と「南瓜」、「干布団」と「枯野」それぞれに、句中の主体も加えた、位置と時間の関係があいまいで、そこに面白さが生じているような、いないような(「ビニールも儚かりしが蛇の衣」も、そう)一見、腰折れのようで、裏側できっちり第三項的なものをたちあげている、この書き方の大成功句が読んでみたい。というか、自分が書きたい。

ゆるやかに階段状の雪として

「として」もまた、あいまいで「として……何?」とつっこみたくなるけれど、『「ゆるやかに階段状の雪として」雪がある』という、冗語の面白さは見逃せない。

水仙を切つてぽたぽたしてゐたる
豚カツを母が作るよ春休


かわいい。

読者として、楽しませていただきました。


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